想いだけでも力だけでも~ガンダムシード速報~(前編)  -実践主義マーケターからの提言-

ガンダムシードの導入業績

導入週の夜客率は常に80%超、朝客率も70%を上回る経過となり初動に関してはSランク確定の数字を示しています。ガンダムシードの業績は台稼働4万1000、台粗利1万1000円前後で推移しているのではないでしょうか。
8月商戦においてパチンコにおける注目機種がガンダムシードだけという中でこの数値が良いのか、期待外れなのか。データサイエンティストの視点から考察してみることとします。
※データ・サイエンティストとは、さまざまな意思決定の局面において、データにもとづいて合理的な判断を行えるように意思決定者をサポートする職務またはそれを行う人のことです。パチンコ企業においてもマーケティング部、営業支援部、営業企画部、マーチャンダイジング部など営業部を支援するチームに担当者がいるのではないでしょうか。

このデータサイエンティストは測定ができない曖昧なものに価値を見出しません。ですから打感にまつわるエトセトラや、版権への想い、予算・購入難易度など一切考慮しません。「リール制御が~」「演出時間が~」などと仰る機械通に対しては「それってあなたの感想ですよね」と一笑に付すことこそが役割です。(勿論そうした要因が影響しないとは言いませんが。)

データ・サイエンティストは、過去に蓄積されたデータ、トレンドから未来予測の精度を上げ、意思決定の後押しをする情報を提供します。

では具体的にデータサイエンティストはどのようなプロセスで未来予測を立てるのかをご紹介します。方法はマクロデータ×蓄積されたビックデータ×現況整理×運用仮説でガンダムシードの業績予測をします。

① 本年の4円パチンコの年間粗利は1.1兆円規模。月間平均で916億。季節補正で8月の想定粗利は930億円。
② 昨年の8月に導入された機械(サラ金、からくり、ゴジラなど)の粗利構成は17%
③ 今年8月の新台粗利規模は158億円
④ 8月発売機種のガンダムシードの販売台数シェア70%
⑤ ガンダムシードの想定獲得粗利138億円※導入一カ月
⑥ 販売台数4万台での獲得日粗利4.5億円※導入一カ月
⑦ ガンダムシードの平均台粗利1万1250円
⑧ ガンダムシードの導入週の平均台粗利1万2500円
⑨ ガンダムシードの平均稼働4万1600 ※玉粗利運用0.3円と仮定

データサイエンティストの視点で導いたガンダムシード導入前の業績と、ガンダムシードが導入された後の結果が近いことがこの視点の分析の妥当性と必要性を示していると思います。

データサイエンティストのデータを活用するには

もちろん、これは全国的な業績予測に過ぎず、営業成果につなげるためには、さらなるドリルダウンが必要になります。

① 商圏におけるガンダムシードの需要測定(粗利規模)
② 自店における獲得期待粗利の算出(商圏需要×店舗競争力)
③ 商圏におけるガンダムシードの導入状況(自店、他店)
④ 自店における導入台数の決定(台数・戦略余地の有無、導入目的などによる最終調整)

たとえば、エリア需要に対してエリア供給が少ないケースではどうするか?
 A,導入台数を増やしファンの遊技機会を増やし、利益率を抑えながら総粗利増を狙う。
 B,需要過多のため、利益率を上げ顧客回転を促す。

たとえば、一番店の導入台数が少ない場合はどうするか?
 A,自店も導入台数を抑え、経費削減を狙い顧客還元をする。
 B,競争力アップのチャンスと捉え、適性以上の導入でライバルを叩く。

たとえば、二番店の導入台数が多い場合はどうするか?
 A,一時的な競争力低下は許容し、適正台数を貫く。
 B,意図的に過剰供給にし、相手の戦略を破綻に追い込む。

データサイエンティストのデータは運用する人の意志によって、攻撃にも防御にもかたちを変えていきます。

ガンダムシードを導入してなにを実現したいのか?
目的や大義のない戦いは無用な憎しみと悲しみを生み出すものに過ぎません。

※ガンダムシードでザフト国の広告塔として登場する歌姫にラスク・クラインという人物が登場します。彼女は劇中を通して地球軍のキラ・ヤマトに、そしてキラ・ヤマトの幼馴染であり親友であり敵であるアスラン・ザラに、そしてザフト軍、オーブ軍、地球軍に関わる全ての戦闘員に対して語り掛けます。「わたくし達が本当に戦わなければならぬのはなんなのか?もう一度考えてみてください。敵を殲滅させれば戦いは終わるのですか。幸せは訪れるのですか」

ガンダムシードがもたらしたもの

ガンダムシード導入によって4円パチンコ市場は前週比115%アップと大きく客数を伸ばしました。盆商戦への導入期という季節要因もあるため、全てがシードに起因するものではないでしょうが、前年推移と比較してもかなりの貢献が認められます。

今年の盆商戦は前年に対して4円パチンコ、20円パチスロ合わせて110%増客した状態で突入をする形になります。台風の進路という不安材料がありましたが、前半戦については前年を上回る展開になることは想像に容易いでしょう。

ではこの4円パチンコの季節要因以上の増客要因はなにでしょうか。
ガンダムシードの回遊状況を分析すると約20%がパチスロ回遊。約5%が1円パチンコ回遊だというデータがあります。昨年の4円パチンコバブルは6号機に失望したパチスロファンによって作られたものであることは周知の事実です。持続性は不確定ですが、ガンダムシードの好調要因は氷河期世代によるプチバブルという表現が妥当でしょう。

ガンダムシードによる4円パチンコの底上げによる副次的効果をまとめます。

① エヴァ咆哮の客数が維持されている
② ガンダムユニコーンの客数が維持されている
③ パチンコによるパチスロ集客が可能

特にこの盆商戦に恩恵を受けた店はエヴァ咆哮のトップ店舗がエリア最大級のガンダムシードを導入したケースがあげられます。

具体的な事例でいうと、千葉県柏市でやすだ柏店とメガマルハン柏店の戦いが参考になるでしょう。エヴァ2BOXでエヴァ3BOXを構えるメガマルハン柏店に圧勝していたやすだ柏店ですが、メガマルハン柏店が2BOXのガンダムシードを導入するとガンダムシードを1BOX導入したやすだ柏店を客率、客数ともに逆転。ガンダムシードの瞬間的な集客パワーを見せつけている形になります。また拮抗していた20円パチスロATもシード導入タイミングでメガマルハン柏店に分が出ていることも興味を引く案件です。

また楽園系列ではシード導入時にユニコーンを極力維持し、導入後でも15名以上の客数を維持している店舗が数多く散見されます。ライバルが捨て行くコンテンツに顧客をつけることは【差別化かつ独自化】であり、店舗の強みとなります。
ガンダムシードによるピークアップ施策と並行してガンダムユニコーンによる強み形成を抜かりなく遂行する。トップ企業である所以ではないでしょうか。

ガンダムシードの導入効果はこの【集客力】であることは疑いの余地はありません。年間で客数比率10%以上の影響力を持つコンテンツ、市場の競争力を左右するコンテンツは数機種です。パチンコ店は売上があればどんな戦略も価値提供も可能です。その売上とは顧客の数と期待感の創造なしは実現は不可能です。盆商戦を前に110%増大した売上を何に活用するのか(したのか)、秋商戦を決定づけるのではないでしょうか。
※ラスク・クラインから「何のために戦うのか?」を問われたキラ・ヤマトは、仲間が攻撃されるから戦う、戦わなければやられてしまうと答えます。ラスク・クラインは問い続けます「では敵を全滅させることが戦いの目的ですか」。キラ・ヤマトは我に返ります。「戦いの目的は敵を全滅させることではない。目的は平和をとりもどすことだ」
しかし親友でありザフト軍パイロットであるアスラン・ザラとの戦闘でストライクは大破し、戦う術を失ったキラ・ヤマトに対して敵国のヒロインであるラスク・クラインは驚くべき行動をとるのです。

次回に続きます。

続きの記事はこちら「想いだけでも力だけでも~ガンダムシード速報~(後編)」

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する