Global Pachinko株式会社の長北(https://x.com/global_pachinko)でございます。
パチンコ業界のインバウンド担当改め、新規誘引施策全般を担うことになりつつある昨今ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
パチンコに限らず、ホビー業界全般において「新規ユーザーの獲得」は最重要課題であるはずなのに、どこか他人事のように扱われている現状に、私は日々違和感を覚えています。
「何をやっていいかわからない」というのは、問題解決においてよくある出発点です。ならばまずは、他業界における成功事例から学んでみるのが良いのではないでしょうか。
TCG(トレーディングカードゲーム)の構造分析
まず取り上げたいのは、TCG。これはパチンコと驚くほど類似点の多いホビーです。
特徴を挙げると以下の通り
• 継続的かつ高額な金銭的負担がある(類似)
• 1プレイに20〜60分ほどかかる(類似)
• 週末大会に出ると半日、グランプリ級の大会では丸2日必要(類似)
• プレイの理解に最低でも数時間~半日必要(類似)
• 一人では遊べない(相違点でありつつも、初動の心理的ハードルとしては類似)
• 膨大なカードの個別知識が必要(類似)
こうして並べてみると、プレイにかかるコスト・習熟の難易度・環境依存性など、パチンコとTCGは「一見ライトだが、実は相当にディープ」な構造を共有していることがわかります。
格闘ゲームの構造分析
もうひとつの比較対象は格闘ゲーム、とくに『ストリートファイター』シリーズなどが典型です。
こちらは「参入ハードルの高さ」にフォーカスすると非常に参考になります
• 難解なコマンド入力(類似:目押しやハンドル操作)
• 最初は何が起きているか分からないまま負ける(類似)
• 金銭コストは低いが、代わりに「練習時間」が膨大に必要(相違)
• キャラクターが多く、初心者には選び方が難しい(類似:機種選び)
こうした比較を通じて明らかになるのは、「複雑なホビーにおける初心者体験の困難さ」がパチンコに固有の問題ではなく、共通する業界課題だということです。
他業界に学ぶ新規誘引施策
① 構築済みデッキ=“すぐ遊べる”導入設計
TCG業界では「まずは遊ばせる」ことに徹底的にこだわります。たとえば、
• 遊戯王の「スターターデッキ」
• ポケカの「構築済みデッキ」
• MTGの「ジャンプスタート」「プレインズウォーカーデッキ」
など、買ってすぐにプレイできる商品が豊富です。勝てなくても「雰囲気を味わえる」ことを重視し、最低限のストーリー性を持たせた作りになっています。これはパチンコでいうところの「演出だけでも楽しめる初心者向け機種」に非常に近い思想です。
② 店舗イベントにおける“初心者卓”と“ティーチングスタッフ”
TCGイベントでは、初心者専用卓の設置が当たり前になっています。そこでは
• 説明役のスタッフが常駐
• カジュアルルールで勝ち負けよりも体験重視
• 商品ではなく「経験」や「記念品」が主眼
という設計がなされており、「いきなり大会に放り込まれる」ようなことは起こりません。これはパチンコイベントにも転用できる大きなヒントです。
③ デジタルとの接続:遊ばなくても“理解できる”環境
さらにTCG業界では、オンラインでの「体験設計」も急速に進化しています。
• 『ポケポケ』(ポケカのアプリ)
• 『MTGアリーナ』(段階的チュートリアル搭載)
• 『遊戯王マスターデュエル』
これらは無料でプレイ可能かつ、ルール理解の助けになるよう設計されており、「実際に会場に足を運ぶ前に、気軽に雰囲気を掴む」ことができます。
つまり、「理解→体験→習熟→課金」のステップを分断しているわけです。この分断設計が、ハードルの高いホビーにおいて非常に有効なのは言うまでもありません。
格闘ゲームの例:ストリートファイターの“育成モード”
格闘ゲーム、とくにストリートファイターシリーズでは、「新規プレイヤーの育成」を意識したモードが実装されています。
• 対戦をせずに遊べる「チュートリアル」「トライアル」
• 入力練習の「トレーニングモード」
• 段階別のCPU戦で成功体験を得やすい設計
などがそれです。パチンコでいえば「当たらなくても体験できる」試打モードや、「わかりやすく解説するガイド機能」などに通じる部分があるでしょう。
解像度が上がれば、解決策も見える
こうした分析を通して見えてくるのは、「新規の壁」はどのホビーにも存在するという当たり前の事実。そして、それを乗り越えるための設計思想や施策は、すでに他業界で多数実装されているという事実です。
『サミー777タウン』や『777Real』のようなオンライン施策、あるいは初心者講習会イベントの開催といった取り組みも、これらの延長線上にあると捉えれば、より深く意図を理解し、効果的に活用していけるのではないでしょうか。
おわりに:とりあえず、真似しよう
というわけで、今回は「他業界における新規獲得施策から、我々が学べることは多い」というお話でした。
“ゼロから考える”のではなく、“すでに成功している例を観察し、取り入れていく”。そこから始めることで、きっともっと効率的で、より本質的な施策につなげていけるかもしれません。
また次回!