ラストウォーに咲いた1輪の花~人間性の回復と利他経済の誕生~ -実践主義マーケターからの提言-

プロローグ:ラストウォーという現象を知っているか

あなたは「ラストウォー」というゲームを知っているだろうか。
正式名称は Last War: Survival。
2023年8月に世界展開された FUNFLY PTE. LTD.(旧 FirstFun HK LTD.)の戦略シミュレーションだ。

このゲームは静かに世界を席巻し、気づけば
累計売上20億ドル(約3000億円)超
主戦場は日本・韓国・米国という巨大市場で、
モバイルゲームの歴史に残る“戦略MMO×ソーシャル”作品となった。

だが、単なるヒットゲームで終わらない。
ラストウォーは現代人の精神構造・承認経済・利他性・現実社会の欠落に深く触れ、
プレイヤーを心理レベルで変化させる“社会試験場”と言える。
現代のゲームは「逃避ではなく訓練」だ。
本作はその象徴であり、
現実社会の歪みの中で疲弊した人間が、
もう一度、自分の価値と理想を取り戻すための戦場でもある。

導入設計:なぜ、誰でもこの世界に入れるのか

ラストウォーの第一の技法は、
プレイヤーを“滑らかに”世界へ溶け込ませる導入設計にある。

◎ 心理コストの極小化
 • ミニゲーム広告
 • 直感タップの軽操作
 • 数十秒で成果
 • 派手な演出と報酬音
 • チュートリアルの柔らかい誘導

「とりあえず触る」心理を邪魔しない。
現代人が疲れすぎて覚悟のいらない娯楽を求めていることを、
このゲームは深く理解している。

脳を疲れさせない入口 → 心を燃やす中盤へ

この“二段エンジン”こそ、中毒性の源である。

中盤設計:気づけば“戦略と責任”が生まれている

熱狂を作る際に忘れてはならないことがある。

人はゲームにハマるのではない。
意味にハマるのだ。

ラストウォーは時間を奪うのではなく、
存在意義(Identity)を与えている

 • 英雄育成 → 自己成長
 • 都市建設 → 制御感・所有感
 • PvE → 初学的成功体験
 • PvP → 競争と緊張
 • 同盟戦 → 役割と責任

ここでプレイヤーの脳内はこう変化する:
遊び → 成長 → 防衛 → 戦略 → 指揮 → 責任

これはゲーム心理学で言う **Self-Determination Theory(自己決定理論)**に沿う。
 • 自律性:自分で決める
 • 有能感:成果を実感する
 • 関係性:仲間とつながる

この三位一体を揃えたゲームは離脱しない。

連盟という革命:動機が“自己”から“利他”へ変わる瞬間

多くのゲームは「強くなりたい」が到達点だ。
だがラストウォーはそこから先がある。

プレイヤーは連盟に入る。
すると、心理はこう変わる:

◎ 初期
「自分が強くなるために戦う」
◎ 中期
「仲間と一緒に勝つために戦う」
◎ 後期
「仲間を守るために戦う」

ついに動機は利他性へ移行する。
自分の強さは、仲間のための手段になる

ここでゲームは娯楽から
“使命”へ変わる。

称賛と承認:人間の魂がもっとも飢えた栄養

現実社会は今、
人を承認する回路を失っている。

 • 会社は成果しか見ない
 • SNSは比較と嫉妬の装置
 • コミュニティは希薄
 • 承認されるのは“結果”だけ
 • 人格も努力も見えない

しかしラストウォーでは、
 • 「ナイス防衛!」
 • 「サポート助かった!」
  -「あなたのおかげで助かった」
 • 「いつもありがとう」

人格と行動が可視化され、承認される。

承認の質が違う。
「成果」ではなく「存在」が褒められる。

これは、
現実で多くの人が奪われたものだ。

課金の意味が変わる:罪悪感から誇りへ

普通のゲーム
→ 課金=自己の欲・強さのため

ラストウォー
→ 課金=仲間のための奉仕

プレイヤー心理はこう変化する:

消費 → 投資 → 貢献 → 献身 → 誇り

課金者はこう思う:

「俺が守らなきゃ、誰が守る」

これは宗教性に近い。
利他という精神的報酬の獲得である。

 組織とリーダーの“真価”が露呈する世界

現実の会社では、
 • 年功序列
  -肩書社会
 • 権威の虚構
 • 支配と恐怖管理

がいまだにまかり通る。

しかしラストウォーでは通用しない。
 • 支配では動かない
 • 尊敬なき命令は無視される
 • 恐怖は権力にならない
 • 指示より“信頼”が力を持つ
 • 役職は人格で決まる

リーダーに問われるものはただ一つ:
利他性と共感力

粗悪な管理者は崩壊する。
連盟は離脱し、見捨て、他の世界へ行く。

この世界では、
リーダーシップ=人格 × ビジョン × 利他の行動であり、権威 × 自己保身 × 恐怖の行使する似非リーダーシップは通用しない。

“脱出できる社会”が、思考の自由を生む

現実社会では人は簡単に組織を離れられない。
仕事、金、人間関係、家族、責任。

だがラストウォーでは違う。

 • コミュニティは選べる
 • 連盟は移動できる
 • 人間関係は再構築可能

この“自由”が人間の精神を回復させる。

居場所は選んでいい
環境は作り直せる

この気づきは、
現実世界の宗教的束縛を壊すような、
強烈な覚醒をもたらす。

ラストウォーは、腐った現実世界への反逆である

ゾンビは象徴だ。
思考停止した社会の。
腐敗した管理。
無感動と無責任。

リアルウォーにすむ兵士たちは気づく。

 • 人は本来、利他で強くなる
 • 承認は生命の燃料
 • 組織は恐怖ではなく尊敬で回る
 • 貢献は喜びである
 • 信念は捨ててはいけない

ラストウォーとは、
諦めに抗う心の戦争である。

最後に倒すべき敵は、
外ではなく自分の内側にいる。

順応という名の敗北
無力化された自分
諦めてしまった理想

ゲームの中で育てた英雄が語り掛ける。

「戦う準備は出来ているぜ」

結論:ラストウォーは未来社会のプロトタイプである

このゲームは、
人間の未来像を提示している。

 • 自律した個人
 • 利他で繋がる共同体
 • 認め合う関係
 • 選択できる組織
 • 奉仕する強さ
 • 理念を持つリーダー
 • 信念を失わない人間

ここで得た学びは、
現実を変える火種だ。

ラストウォーは、
失われた理想と尊厳を取り戻す
最後の聖戦である。

エピローグ

これはゲームではない。
魂のリハビリだ。

そしていつか、
我々は気づくだろう。

ゲームが現実を模倣しているのではない。
未来の現実が、ゲームの中で先に生まれている。

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する