機械代高過ぎ!
筐体に余計なもの付けなくていいからその分安くして!
と言ったコメントや呟きをしばしば見かけます。
コロナ禍で苦しい状況もあり、ホール様のお気持ちはごもっともです。
プレイヤーからしても、
その高い機械代はおれたちが負けたカネから出てるんだよ!
機械代下げてその分客に還元しろ!
と思う方もいるでしょう。それも分かります。
自分は開発者ですので、製造・販売・営業部門等でどのように機械代が決められているかは正確には分かりませんが、開発費については分かります。
ただし、メーカーによって考え方は様々ですし、状況は違いますから一概にこうです、と言うことは難しいです。
版権や筐体、スペックや適合率など機種ごとに状況は全く異なってきます。
そんな前提で、今回は「機械代と開発費の中身」を紐解いて書いてみようと思いますが、独断と偏見でありますことはご容赦ください。
架空のメーカーの架空の機械での話ということで、あくまでイメージとして捉えていただければと思います。
機械代の内訳のイメージ
それでは機械代の中にはどんな費用が含まれるか、概要を見ていきます。
・筐体費
まずは「モノ」自体の費用ですね。
裏箱やドア、リールやホッパー、液晶、各種基板など。
なるべく他の機種と部品を共通にしたり、設計部門や購買部門が価格を少しでも下げるべく日々努力しております。
・筐体開発費(設計、試作、金型など)
筐体開発費は、汎用筐体であれば複数機種で按分して償却していくケースが多いと思います。
気合い入れて専用意匠・役物を作る場合、1機種で償却する事になり、目標台数や機械代に大きく跳ね返ってきてしまうこともあるでしょう。
もちろん専用意匠も複数機種で使い回せば1機種・1台あたりの負担は薄まっていきますので、機械代への影響も軽くなってきます。
・版権料、楽曲使用料など
今は版権を使用している機械がほとんどですので、ほとんどすべての機種でかかる費用と言ってもいいでしょう。
楽曲使用料も権利楽曲をたくさん使うほど費用もかさんできますので、ごめん今回●曲までね!みたいな縛りが入ることも。
版権を使わないオリジナルのタイトルであれば、もちろんこの費用はかかりません。
・その他共通でかかる諸経費
販管費、製造に関連する経費、プロモーション費などなど、企業を運営していくために必要な経費も機械代に乗ってきます。
また特許料や証紙代など、どの機種でも必要な費用もありますので、1台あたりで按分してもそれなりの金額になるでしょう。
★開発費
機械代からこれらの費用を差し引いて、残った分が機種開発に使える費用、ということになります。
版権の強さや仕様・スペックなどを考慮し、販売台数の目処を立ててそれに応じた開発費を定めるのが一般的でしょう。
例えば機械代から共通費用を差し引いて100,000円残り、目標台数が5,000台であれば、開発費は5億以内、ということに。
開発費以外の費用は”基本的にかかる費用”ですから削ることは難しく、
機械代を下げると開発費が減る=その分機械のクオリティが下がる
という風にご理解いただければと思います。
開発費の内訳のイメージ
それでは続いて、機種開発にはどのように費用が使われるか見ていきましょう。詳しく書くとキリがないので少し駆け足で。
・プロデューサー、ディレクター費
機種のコンセプトや仕様、スペックタイプ、ゲームフロー、演出など
機械の全体像を組み立てるプロジェクトの中枢。
・メイン企画、出玉設計費
リール配列・配当や停止データ、出玉フローやメイン抽選・数値の設計。
・演出企画、映像企画費
演出フローや絵コンテなどの演出設計、演出抽選システムの構築や抽選数値の振り分けなど。
・映像制作費
映像素材の制作。専門の業者にお願いをするケースが多く、昨今では最も費用がかかる部門。
・サウンド制作費
サウンドデータの制作、制御プログラムの作成。音声収録費も必要。
・ランプデータ制作費
ランプLEDデータの制作、制御プログラムの作成。
・デザイン制作費用
リール図柄やパネルデザインの制作、試作・本申請用の印刷物の作成。
・メインプログラム制作費
企画や出玉設計と連携してメインプログラムを作成、組込。
プログラム部分の申請書類の作成。
・サブプログラム制作費
演出の抽選プログラム、液晶制御プログラムの作成。
・デバッグ費
開発終盤に行う各種チェック、バグ取り。
相応の台数の筐体を用意する必要もあります。
これらが機種のソフト開発の概要ですが、ここまでの費用は基本的に工数=人件費です。
人をかけて制作物量を増やしたり開発期間が長くなれば、その分費用が嵩んでいくことになります。
あと機種固有でかかる費用として大きいのは
・申請費用
です。
どこまでスペックを攻めるか検討した上で申請本数を定めて予算を確保し、その本数の中で適合を取れるように適合率を調整していきます。
型式試験で保通協に支払う試験料は回胴式遊技機では1本180万ほど。
申請本数が10本であれば約1,800万弱。
さらにその分の申請用筐体を用意する必要があります。
開発費の内訳としては大まかにはこのようなイメージです。
費用感はメーカーさんやタイトルによって様々ですが…
下記はざっくりなイメージですが、
筐体などの原価で20万ほど。
開発費が1台当たり10万円(開発費5億円、5,000台の場合)。
そこに、プロモーション費や営業に係る経費(営業マンの給料含む)、その他販管費(本社関連含む)などなど・・。
先程例に挙げた「開発費5億」という金額、決して高過ぎるわけではなく、そう考えると現在の遊技機メーカーも簡単に儲かるわけではないというのもお分かりいただけるのではないでしょうか。3,000台などの販売台数で赤字になっているタイトルも多いものと想定されます。
※何万台も売れるメインタイトルなどでは開発費で10億を超えることもありました。
開発費を絞ればその分
映像演出の数が少なくなったり
作画がショボくても直せなかったり
出玉数値や演出頻度の調整が不十分だったり
申請本数が少なく適合率を上げざるを得なかったり
どうしても遊技機としてのクオリティは下がります。
とは言え、他の業種と同様に厳しい状況の中、各メーカー開発費は削減の方向…
限られた予算の中でいかに良い機械を作るか、それも開発者が考えなければいけない大事な要素ですね。
今回は結論のある話ではないですが、メーカー・開発も余裕の無い中で少しでも良い機械を生み出せるようにやり繰りしてる、ということが何となくご理解いただければ幸いでございます。