なんだかんだと3年ほど駆けずり回った結果、少しずつ皆さまに成果をお届けできてるような気がしているパチンコ業界のインバウンド担当、長北でございます。
とは言っても、具体的に何をやったか?と言われると契約関係というヤツがあるのであんまりお話できないのが痛いところなんですけどもね。今日は表に出しても怒られなさそうなところを中心に、過去盛大に失敗したパチンコ業界インバウンド対策と、今の状況がどう違うのかを解説してみようかなと思います。
1.訪日客の絶対数が違う
増えたとは言うけど、実際どのくらい増えてるのかというところを軽くまとめます:
| 年 | 訪日客数 |
|---|---|
| 2005 | 約 670万人 |
| 2010 | 約 860万人 |
| 2015 | 約 1,970万人 |
| 2017 | 約 2,870万人 |
| 2019 | 約 3,190万人 |
| 2020 | 約 410万人(年初からコロナ禍開始) |
| 2021 | 約 25万人 |
| 2022 | 約 380万人 |
| 2023 | 約 2,510万人(5月にコロナ禍終了) |
| 2024 | 約 3,690万人 |
| 2025 | 約 4,270万人(見込み) |
で、2015年ごろの訪日客をあてこんで店舗やメーカー、組合が色々と対策を取ったのを対策第1期とします。
対策第1期
観光庁の「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」というやつがありまして、国の主導で多言語対応の改善・強化をしていきましょう、と旗が振られた時期です。パチンコ業界も例に漏れず、組合主導で『ぱちんこの遊び方』の多言語版が作られたり、一部店舗では多言語対応スタッフを導入したりという施策が成されました。
言葉を選ばずに言うと、それが総じてコケたわけですね。以降、その時の状況を基に『外国人にパチンコ打たせるとか無理!』という流れになってしまったわけです。
これ書くと一部から干されそうなんでハラハラしながら書くんですが、一応当時からの反省点をまとめておくと
・全体的に『個』の動きでしかなかった
⇒店舗とメーカーが共同で云々・・・といった話は特になく、店舗は店舗、メーカーはメーカーでやれる事をやっていたという感じでしょうか。
・認知拡大活動がなかった
⇒広大な日本の土地で、訪日客向けにスタンバイしている店舗はわずか数店、それも特段対外的に認知拡大活動をしていなかったとなれば、流入はごく少数となるのは必然でした。そもそもどこに行けばパチンコとやらができるんだ?という人が多い訪日客を対象に、その状況ではなかなか苦労されたようです。
・翻訳精度が低かった
⇒これは仕方ないという点と、仕方なくない点(オブラート表現というやつです)があるんですが、当時の制作物全般は実用性がほぼありません。
・リサーチが行われていなかった
⇒これもかなり致命的だったポイントです。
「外国人はこう思うだろう」「海外ではこういうゲームが流行っているらしい」という、いわば“想像上の外国人”を相手に施策を組んでしまっていたケースが非常に多かった。
実際に訪日客に話を聞いたのか、どこの国の人を想定していたのか、そもそも「観光客」「在留外国人」「中短期滞在者」の区別すら曖昧なまま進んでいた印象があります。
結果として、誰にも最適化されていない、誰にも刺さらない施策になってしまった、というのが正直なところでしょう。
対策第2期
第1期が盛大にコケた結果、業界全体としてどうなったかというと、
「やっぱり外国人向けは無理だったよね」
「需要がないんだから仕方ない」
という空気が一気に広がりました。
この第2期は、ざっくり言えば“消極的撤退フェーズ”です。
・多言語施策は最小限に
・インバウンドという言葉自体があまり語られなくなる
・一部の熱心な店舗・個人だけが細々と継続
といった状態で、業界全体としてはほぼ止まっていた時期と言っていいと思います。
ただ、この時期にひとつだけ重要な変化がありました。
それが「個人レベルでの実体験データの蓄積」です。
・外国人のお客さんが実際に来店した時、何に困るのか
・どこで離脱するのか
・逆に、どういう瞬間に「面白い」と言ってくれるのか
こういった情報が、店舗スタッフや一部のプレイヤー、そして我々のような“たまたま現場に居合わせた人間”の中に、断片的ではありますが溜まり始めた時期でもありました。
業界としては止まっていたけれど、水面下では「次にやるなら、こうしないとダメだよね」という反省材料が少しずつ揃っていった、そんな期間だったと思います。
対策第3期(いま)
そして現在。だいたい2022年後半からのお話です。
ここが、過去2回の失敗と最も大きく違うポイントです。
まず大前提として、
・訪日客の絶対数が“桁違い”
・円安による滞在コスト低下
・アニメ・ゲームを起点とした日本文化理解の進行
この3点が揃っています。
2015年当時と比べて、「日本に来ている外国人の質と量」がまるで違う。
加えて、決定的に違うのがアプローチの仕方です。
・フィールドリサーチの実施
⇒路上でのアンケート調査、店内滞留外国人へのヒアリング、パチンコツアー等
・対訳の整備(翻訳精度の向上)
⇒ウチが3年ほどかけて取り組んでいる内容です。特に対訳の整備と翻訳実務については、AIの進化による工数の大幅削減も無視できないポイントですね。本来は対訳の整備についてベテランの翻訳者が複数名、パチンコとは何ぞやを理解しつつ数年がかりで定義し、1日1万文字程度の翻訳を月数百万円かけて実行していく必要があったのが、翻訳者一人で1日10万文字を翻訳することが可能になったわけです。
・小規模の訪日客向け試打ブースを設置
⇒これもフィールドリサーチの一環ではありますが、同時にそこそこの人数に対して『パチンコとは何ぞや』『何が面白くて打つのか』を適切に伝えられたかなと。
このあたりが、ようやく「必要なこと」として共有され始めたのも大きな違いです。
正直に言ってしまうと、今やっていることの多くは、2015年にやるべきだったことです。
ただし、それを当時やっても成功したかというと、たぶん答えはNOでしょう。
理由は単純で、
「来ている外国人が違う」
「情報環境が違う」
「日本文化の理解度が違う」
「各施策に費用/工数が倍以上かかる」
からです。
じゃあ、今回は成功するのか?
これについては、まだ断言はできません。
ただ、少なくとも
・過去の失敗理由が言語化できている
・現場ベースのデータがある
・業界内外で“個”が繋がり始めている
この3点が揃っている今は、過去2回とは明確にフェーズが違います。
「外国人にパチンコを打たせる」のではなく、
「観光資源としてだけではなく、コミュニケーションツールとしてのパチンコの価値を理解してもらう」
この視点に立てるかどうか。
そこを履き違えない限り、少なくとも“盛大にコケる”ことは、もうないんじゃないかなと。
……まあ、また3年後くらいに
「いやー、あの時は甘かったですね」
って言ってる可能性もゼロではないんですけどね。
その時はその時で、またネタにして笑い話にできればいいかな、と思っております。


