3つの生き残る道 -実践主義マーケターからの提言-

クリスマスに愛を語るはずが、気が付けば年を越してしまいました。オミクロンが世間を賑わせている間も欠かさずに、各地を渡り歩き、ベッドの性能評価を繰り返している私が本年お勧めするのはサータというアメリカのマットレスです。

沈み込みはやわらかいが、瞬時に全身をホールドし安定する。寝返りがしやすく、横向きで寝ても肩が適度に沈み込み負荷が駆らない。出来るならばシングルクッション仕様を推奨したい。
抜群のフィット感ゆえにクイックレスポンス性には乏しいが、甘すぎない寝心地と奥行きと芯のあるホールド感は、まるで欧州車のように「大人なあなたの乱暴な欲求」を満たしてくれるでしょう。

皆さま、本年もマーケティング講座をどうぞよろしくお願いします。

どんな寝床がお好きですか?

①私の小学生の時の寝床は押入れの二階でした。座布団を敷き詰め、巣穴のように寝ていた気がします。なぜ、押入れで寝たかって?四次元への入り口に興味があったからではなく、布団を敷いて畳むのが面倒だったからです。
※差別化軸・・手軽軸。 顧客ニーズ・・面倒くさい。

②二十歳前後の寝床は部屋の片隅にある革張りのソファでした。部屋が手狭でベッドが置けなかったこともあり、音楽活動が好きだった私はソファで作曲に没頭し、疲れ切ったらそのまま寝る。数年間そのような生活を続けていた記憶があります。
現在の肥えた体では横になるだけで窮屈なのですが、私の若かりし魂を吸い込んだソファは「お前の今は満足か?」とボンネルスプリング特有の跳ね返りの強さで問いかけてきます。今の時代は低反発だぞ、といなしますが、嫌いではありません。
※差別化軸・・密着軸。 顧客ニーズ・・ソファとベッドを兼用したい。

③そしてマットレスのないシングルのパイプベッドでの共同生活時代。お金はないが愛はある。そう、皆様にもあるそんな時代です。この頃には戻れませんが、戻りたいとは思います。シングルベットと焼き鳥とビールがあれば何もいらなかったあの頃に。
しかし、妻は頑なに戻りたくないと言います。「今の方が快適だ」「戻る必要がない」「狭寝返りすら打てなかった」「それは思い出補正だ」「バイアスをかけるな」と。

④ベッドインとともに瞬間的に幸せの世界へ誘うシモンズのダブルクッション×ポケットコイル×低反発マットレスの雲のような寝心地が過去を凌駕しているのでしょう。
※差別化軸・・・商品軸。 顧客ニーズ・・・快適に眠りたい。

上記の歴史を振り返ると私の人生の寝床は①押入れ&座布団②ソファ③パイプベッド④高級ベッドという遍歴が掴めると同時に、時代によって寝床に求めるニーズが変化していることも分かりました。

顧客に選ばれる為の三つの差別化軸

顧客に選ばれる為には、良いベッドを作ろう!良いマットレスを作ろう!では選ばれません。
顧客のニーズに合致したものでなければ、「刺さらない」「魅かれない」「買ってもらえない」のです。
そして顧客のニーズを分かりやすく分類しているのが、三つの差別化軸という考え方です。

差別化軸その1・・・商品軸(テーマは最高
良質なものを求めるニーズに応える。
具体的手法は、最高なものを、最高の場所で、最高の状態で届ける。
実行に必要なものは、集客力、ブランディング。

差別化軸その二・・・手軽軸(テーマは最安)
手軽に収めたいコンビニエンスなニーズに応える。
具体的手法は、はやい、安い、便利。
実行に必要なものは、ローコスト経営、合理化。

差別化軸その三・・・密着軸(テーマは最適)
顧客のニーズに寄り添う、良く知っている。
具体的手法は、顧客の個別ニーズに応えて差別化する。
実行に必要なものは、顧客の情報、興味関心。

これはどの業界でも当てはまります。
例えば飲食業界では、大切な顧客・パートナーとのディナーは信頼のおけるレストラン(商品軸)が選択肢となり、提供する側はTPOに応じたテーブルの提供、最適なタイミングでの料理提供、食事状況に応じた味付け、ボリュームの調整が必要になります。

午後の仕事に向けてエネルギーチャージをしたいときにはファストフードが選択肢になり、提供する側は頼みやすいメニュー、提供速度、コストパフォーマンスの追求が必要です。

普段使いでは行きつけの定食屋が選択肢となり、提供する側は顧客の好み、食べる量、苦手な食材などを周知しておく必要があります。

理容業界では、カリスマ美容室(商品軸)、千円カット(手軽軸)、近所の床屋(密着軸)。
惣菜業界では、デパ地下(商品軸)、コンビニ(手軽軸)、近所の肉屋(密着軸)となります。

三つの差別化軸のどこでトップをとるか

カリスマ美容師の店と千円カットの店は同業ではライバルにはなりません。生き残る、勝ち残るためには必ずしも同業種の中で一位をとる必要はないのです。しかし千円カットは家庭用バリカンとはコスパという市場ではライバル関係です。

重要なのは業態で括るのではなく、顧客のニーズ・困りごとで括ることです。三大差別化軸の中でどの軸で勝負をするか?本当のライバルは誰で、どのようなサービスの差別化が出来るのか?を問い続け、価値をブラッシュアップすることです。

例えば私の寝床の話では、
①面倒だから押入れで寝ていたケースでは寝袋の提案(手軽軸=コスパと利便性)などあれば幼き頃のわたしは快諾していたかもしれません。
②ソファで寝ていたケースでは、省スペースでも置けるソファベットや段差をなくすクッションなどの提案(密着軸=顧客の問題に寄り添う)があれば修行生活も救われたのではないでしょうか。
④は様々なメーカーとマットレスの組み合わせ体験ができるショールームの充実(商品軸×密着軸=顧客にとって最高の体験づくり)があれば満足度はあがるのでしょう。

さて、ここまできたら、うちのパチンコホールは、どのポジションを取ればいいのか、ということですよね。それが本題だったのですが、長くなってしまったので、近いうちに続きを書きたいと思います。

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する