演出に関する規制について -とある開発者の独り言-

前回の記事(「パチスロ開発のお仕事紹介〜演出企画・映像企画編〜」はこちら)でも軽く触れましたが、遊技機においては出玉面や仕様面だけでなく演出においても多くの規制が存在しています。
演出については規則には明記されていませんが、技術上の解釈基準や組合が作成するガイドラインがあり、それに準拠しないと型式試験で指摘が入ったり不適合になってしまうこともあるのです。

ということで今回は、演出に関する規制の概要と実例をご紹介したいと思います。
意外と一般的に知られていない内容かなと思いますので、「何のためにこんな演出してるの?」という疑問が少しは解決するかもしれません。

メイン基板からの信号に反した演出はNG

メイン基板はフラグの抽選や出玉抽選・リール制御等を司っており、演出抽選や映像表示はメイン基板からの信号を受け取ってサブ基板にて行われます。
サブ基板からメイン基板への信号出力は不可で、メインからサブへの一方向通信。
そしてメインから送られてくる信号に反した演出をサブで行ってはならないのです。

いくつか具体例を見ていきましょう。

●内部的にボーナスに当選しているのに液晶に「はずれ」と表示する
連続演出に発展してはずれたと思ったら次レバーで復活!熱い瞬間ですよね。
ただこの復活の前のゲーム、内部的にボーナスに当選しているにも関わらず明確に「はずれ」と表示するのはNGです。
実際の機械を見ても、「はずれ」や「LOSE」等の文字は表示せずに画面が暗転するのみ等ぼかした表現をしているものが多いかと思います。
このNG例に引っかかって不適合になることを避けるための対応ですね。

●成立役を取りこぼさせる演出
例えば7とチェリーが同時に狙えない配列の機械で、ボーナス内部中のはずれ時に赤ナビ等のチェリーを示唆する演出をすると、チェリーを狙うことによりボーナスを取りこぼすことになるためNGとなります。
開発としては演出数値の振り分けミスに注意が必要な内容です。

また、ART機で特定役の取りこぼし時にRT移行する時などはこの規制に引っかからないようにしつつプレイヤーに伝わるような演出をする必要があります。
黒色の押し順ナビを出してBARを狙わせて取りこぼし目を出す、などの手法が使われていますね。

善良な風俗を乱すおそれのある演出はNG

個人的には、そもそも18禁の遊びだしある程度はいいのになあなんて思ったりもしますが、いわゆる公序良俗に反する演出はNG、という内容です。

こちらも具体例を織り交ぜて簡単にご紹介していきます。

●性的な表現
エロ系の演出は意外と監視の目が厳しいです。
裸や下着の映像はアウト。
4号機サラ金の野球拳演出とか今の時代に搭載したらほぼ確実にNGになります。
女性の下着が洗濯物で干してあるだけの映像でも指摘があったとかなかったとか。
世知辛い話ですが、注意して演出を考えなくてはなりません。

●残酷な表現
流血シーン等グロ系の演出も注意が必要です。
ケンシロウが牛乳を吐いたり、ザコが吹き飛ぶ時に白い液体が噴出したりするのも試験リスクを無くすためかと思われます。

●犯罪行為を示唆する表現
液晶上のキャラクターが犯罪行為をするような演出もNGとなります。
ちょっとした軽犯罪や道交法違反になるような内容も避けた方が無難です。
5号機「龍虎の拳」のAT中の待機画面でキャラがバイクで走るシーンがありましたが、原作ゲームではアメリカ?の公道をノーヘルで颯爽と走っていたはずですがパチスロではしっかりヘルメットをかぶっていました。
これもリスク回避のためかと思いますが…
映像制作者も「カッコ悪いなあ」と思いながら描いていたことでしょう笑

●射幸心をそそる表現
ホール様の広告宣伝規制にも近しいのかなと思いますが、「一攫千金」「大爆発」「連チャン」など直接的な表現はNGとなります。
大量の札束や現金を描いた映像等も同様です。
実在しないペリカとかならセーフなんでしょうかね笑

遊技者に誤認をさせる演出はNG

一番開発者の頭を悩ませるのがこの「誤認」の問題です。
仕様やスペックを実現するため、かつプレイヤーに違和感なく遊技してもらうために有効ライン外にリプレイやベルなどが揃う配列・役構成を組み上げていくわけですが、そのリプレイやベルなどを演出で強調すると「誤認させる」と言われてしまう可能性がある。とても悩ましい問題ですが、開発した機械を適合させ世に出すには避けて通れない内容です。

こちらも具体例を交えてご紹介します。

●有効ライン外に揃ったリプレイやベルなどをバックランプで強調
前回の記事でもご紹介した内容ですね。
ちなみにVフラなどリール全体を使ったフラッシュや、左リールのチェリーのみ等一箇所がフラッシュする形であれば問題ありません。
あくまで「ラインを強調するのがNG」ということです。

●フラグとして定義されていない組み合わせを表示
例えば有効ライン外に7が揃うようにボーナスの組み合わせが構成されており実際に「777」の組み合わせが存在しない場合、ボーナス確定画面で「777を狙え!」と表示するのはNGとなります。

確定画面で9マスの出目全体と有効ラインを表示して狙わせる機種が多いのはこれを避けるためです。

●第三停止後にリールの図柄に類似した図柄を液晶に表示
特化ゾーンなどで7を狙って揃った時に液晶にズドドドドーンと大きく7が表示される。
気持ちいい瞬間ですよね!

ただこのような時にも誤認に引っかからないように注意しなくてはなりません。
7揃い時、有効ライン上に1つでも7図柄が乗っていれば問題ありませんが、有効ライン上に1つも7図柄が乗っていないとNGとなります。
また、液晶に表示されるのがリールと類似した7図柄ではなく上乗せアイコン等のリール図柄と全く似つかない映像であればこれも問題ナシです。

●遊技の結果を別途明確に表示
特に最近しばしば見られますが、毎ゲームもしくは誤認の危険がある状態のみ、第三停止後に実際の図柄の組み合わせを液晶の隅っこやサブ液晶などに表示しておけば誤認リスクは格段に低くなります。

少々不恰好ではありますが、プレイヤー目線ではそこまで気になりませんし、開発目線でもメリットの大きな手法です。

以上、演出に関する規制について簡単ではありますがご紹介しました。

プレイヤーに今の状態や期待度を分かりやすく伝えるのが演出の役割ですが、その演出1つ作るにも試験に適合するにはこれだけたくさんのことを気にしなくてはいけないんだな〜ということが何となく伝わっていれば幸いでございます。