パチスロ開発のお仕事紹介〜映像制作編〜 -とある開発者の独り言-

開発の業務内容や考えをご紹介していく本シリーズも第5回となりました。
今回は【映像制作】についてご紹介していきたいと思います。

以前にご紹介した【映像企画】と密接に関係するわけですが、実際にその素材を作る映像制作部門での業務の進め方や考え方は、メーカーや制作会社さんによって千差万別。

パチスロ開発のプロジェクトの中で期間も費用も比重の大きなセクションですので、各社力の入れ具合や思想が違って当然ですよね。

ということで、今回ご紹介する内容もあくまで一例と捉えていただければと思います。
まずは業務の大まかな流れから見ていきましょう。

映像制作業務の流れ

・各種設定資料作成
企画の骨子が固まってきた段階で、まずはキャラクター設定や舞台・背景のイメージボードなどの各種設定資料を作成します。
3D映像を制作するのであればキャラや背景・アイテム等の3Dモデルの制作も必要です。

版権によっては版元さまから提供いただけることもありますし、過去に制作した実績のあるシリーズ機であればそのまま流用出来ることも。

映像制作のベースとなるものであり、この設定資料が雑ですと作画の崩れなどクオリティが低下するおそれがありますので納得いくまで丁寧に作成していきます。

・絵コンテ作成
映像企画から受け取った映像仕様書や演出フローをもとにした絵コンテ作成。
映像の動きや演出の流れ、アピールすべき部分や映像尺などの指定をして実際の演出内容を固めていく工程です。
絵コンテが上がったら企画と制作ですり合わせをして制作に進んでいきます。

作画打ち合わせ完了のタイミングで制作物量が決まりますので、正確な映像素材制作の費用算出が可能になります。

予算オーバーしているようであれば、演出を削減したりカット割を工夫して予算内におさめるように調整していくことになります。

・映像素材制作
アニメの作画や3Dムービーの作成は専門の制作会社さんにお願いするケースが多いです。
版権によっては版元さまから制作会社を指定されることも。
大手のアニメ会社さんはTVアニメなど本業で繁忙なためスケジュールが合わないこともあり、そんな時は調整にすごく苦労します…
遊技機の仕事は後回しにされがちなんですよね汗

また、パチスロの開発経験のある制作会社さんですとこちらの意図が伝わりやすくやり取りもスムーズに進みますが、パチスロの開発経験の無い会社さんにお願いする時はこれまた大変です。

「レバーでレア役に期待出来るアツい時に使う映像なんです!」などと説明してもそもそもパチスロを打たない人には伝わらないですし、「あの機種のあの演出みたいなイメージで」と例えても知らない人からしたら「?」ですよね。

そういった状況に陥らないためにも、設定や絵コンテはパチスロを知らない人でもこちらの意図通りの映像を作れるように丁寧にまとめておく必要があるのです。

・演出組み込みの仕上げ作業
映像素材が上がってきたら、演出として実機に組み込むための仕上げ作業を行います。
バラバラの映像素材をつなぎ合わせたり
トリガーごとに映像を切り分けたり
UI等のデザイン物を作成して結合したり
エフェクトを付けて演出としてブラッシュアップしたり。
このような仕上げの工程を経てサブサブのプログラマに演出データを流していく形です。

一般的に「オーサリング」と呼ばれる業務ですが、映像素材と並んでパチスロの演出としてのクオリティを左右するとても大事な仕上げの工程です。

映像素材制作の期間

業務の大まかな流れをお伝えしてきましたが、これらの作業にどれほどの期間や費用がかかるのか…
分かりやすくお伝えしたいところではありますが、成果物に求めるクオリティや制作する物量で大きく変動しますので具体的にお伝えするのはなかなか難しいです。
途中で変更や追加がしばしば発生しコストが膨らむ原因にもなりやすい部分ですしね。

なので参考程度にはなりますが、並のクオリティ・物量で一般的な液晶機をいちから作ろうと思ったら、上述の映像関連業務におおよそ1年〜1年半ほどの期間が必要です。

費用としてもソフト開発費全体の中で30〜40%ほどを占めるケースが多いかと。
とてもウェイトが大きいです。
パチスロに液晶いらない派の自分としてはなかなか歯痒いところですね笑

映像制作者の思い

ここまで映像制作の業務の内容を解説してきましたが、最後に映像制作のメンバーがどんなことを考えているかをお伝え出来ればと思います。

・より綺麗でカッコいい映像をプレイヤーに届けたい
映像を専門とするメンバーはやはり「カッコいい映像を作りたい!」という思いが一番強いかと思います。
今まで見たこともないイカした映像をプレイヤーに届けるべく日々精進しているのです。

・プレイヤーに「伝える」工夫
とは言え、いつでもカッコ良く派手な演出をするのではなく緩急が必要ですよね。
期待度が高くない時には何でもないサラッとした映像をあて、期待度が高い時には明らかにアツいことが伝わる映像を出す。

また、昨今のパチスロはポイントやらレベルやら複雑なゲーム性のものが多いので、プレイヤーにそのゲーム性と今がどんな状況なのかをUIやエフェクトなどで分かりやすく伝える工夫も必要です。

せっかくの出玉性能やゲーム性を活かすも殺すも映像表現次第。
常にプレイヤーに「伝える」ことを意識して映像を制作しています。

・パチスロならではの映像尺
パチスロの映像制作において、一番気にしなくてはならないのは映像尺です。
ぱちんこはメインにて変動時間が決まりその尺に合わせて演出を構成しますが、パチスロはレバー・ボタン・BETとプレイヤーが任意のタイミングで操作し、トリガーごとに演出が切り替わっていきますので、素早く遊技しても演出の流れが伝わるように映像尺を調整する必要があります。

また、プレイヤーに見せたい映像をトリガーの頭に持ってくるなど、パチスロの特性を理解した上で演出の流れを構成することが重要です。

・容量内にデータをおさめる工夫
他のセクションと同様、映像においても容量とのせめぎ合いは行われます。
パチスロにおいては、小役の色ナビなど同じ映像の色違いのデータが必要なことが多く、工夫次第で効率良く容量を圧縮出来ることも多々あります。

期待度が低くプレイヤーが気にしない演出は画質を粗く、逆に注目されるエピソードムービーなどは高画質にするなど、膨大なデータを容量内におさめつつプレイヤーに最大限演出を楽しんでもらうように様々な工夫がされているのです。


以上、映像制作のお仕事のご紹介でした。
長くなってしまいましたが、それだけ今のパチスロの中でも映像制作は重要な位置付けにあり、今後も進化が続いていくだろうと思います。

皆様の心に残る映像を作るべく、開発も引き続き努力してまいります!