今年大流行するもの
日本感染症学会が、冬に備えてインフルエンザワクチンを積極的に接種するよう呼びかけています。その原因は昨年があまりに流行らなかったことによるインフルエンザの免疫低下だというのです。
ピュアでない私は、コロナワクチンに押され続けたインフルエンザワクチン製造メーカーのマーケティング活動だと吐き捨てようとしましたが、知り合いの女医が「今夏に子供たちの間で大流行したRSウイルスは、前年に流行らなかったことが関係しているの」「ピュアな体にウイルスは猛威を振るうのよね」と言っていたのを思い出し、コロナに続いてインフルエンザワクチンの接種も完了いたしました。
未来予測と適切な対応について
未来を予測し、それに備えることは重要なことです。
緊急事態宣言があけると何が起こるのか?予測と現実のギャップはいかがでしたか?それに対する準備は万全でしたか?
わたしは万全ではありませんでした。
緊急事態宣言開けに娘の運動会があり、久しぶりの家族で観戦が可能とのことで嫁から私に出た指令が「髪を刈れ」。仕事の忙しさと、指示には従いたくない天邪鬼な性格によって、前日の当日予約で済ませようとしたところ、まさかの予約満席。仕方なく他の美容室に問い合わせるもすべていっぱい。この時点で私に出た指示が「ほらいったでしょ。もう来なくていい」
近隣には10店舗の美容室と床屋があり飛び込みで入れるだろうと覗くと千円カットには長蛇の列・・・・その時の嫁のコメントは「普段どんな仕事をしているんだっけ?緊急事態宣言があければ人は行動する。行動するまえには床屋に行く。床屋は混むのが分かっているから前もって予約をする。未来予測の精度と適切な対策とかいいながら、自分が全くできていない」
結果的に言うと、この状況下でも客が入っていないおじい様が営む理髪店に飛び込み、「いくらですか?」「1,000円でいいよ」という八百屋のような値交渉の末に、加齢臭とカットの腕は正相関だという法則と穴場の理容室の発見に至り、無事に運動会の参加資格を得ることができました。しかし、私の心はズタズタに切り裂かれたことは言うまでもありません。切り裂かれた心の治療は知り合いの女医に見てもらうこととします。
私の仕事はパチンコ戦略コンサルタントです。
①環境分析(世の中の流れ)②トレンド分析(業界の流れ)③エリア分析(自店競合の流れ)を俯瞰してみたうえで、どこが儲かり勝てるか?自社のポジショニングを決定し戦略構築を行ないます。
それ故に様々な市場分析をする機会があるのですが、今回はとある激戦区で展開されている競争に未来の競争戦略を見ることができるので、ご紹介していきます。
登場店舗は
- 店舗A:全国チェーン大手
- 店舗B:企画日の集客では全国有数の中堅企業
- 店舗C:全国客数ランキング常連の稼働重視店
上記に挙げた各店舗はそれぞれが繁盛店です。
店舗Cが店舗拡大のために数カ月休業の後、大規模リニューアルオープンによって市場が大きく動き出します。
現在の概況はこのような形です。
- 店舗A:休業中の店舗Cの顧客を奪い市場シェア上昇中。主な戦略的機種は『沖縄5』と『韋駄天』
- 店舗B:得意とする浮遊層の来店動機を作り防戦中。主な戦略的機種は『牙狼MAXX』と『大海4』
- 店舗C:グランドオープンの集客~増客へ奮闘中。主な戦略は全方位。新台投入はナンバー1。
ここで注目するのは店舗Cのコア戦略よりも、店舗A、店舗Bの対抗戦略です。
記憶に残る幕の内弁当はない
顧客に積極的に選ばれるためにはバランス型ではだめです。他店と自店の違いを際立たせる圧倒的な魅力が必要です。その魅力を構築する際に必要なことは、クオリティを追求することではなく、ターゲットを絞り、ターゲットの困りごとに徹底的に応えることです。
富山ブラックという有名なラーメンは空襲による復興のために集まった肉体労働者の塩分補給として醤油を濃くしたことがルーツで、今も肉体労働者に愛されています。幕の内弁当は万人受けを目的としているので個性を際立たせる必要がない。結果的に記憶に残らないということになります。
顧客に選ばれるということは、それぞれの顧客が「私にぴったりだ」と感じているという事実です。
店舗Aの戦略の軸は『韋駄天』と『沖縄5』。共通するのは天井なしの三洋の機械。ターゲットはマジョリティ層~ラガード層。機械性能の特徴はスタート回転数とともに玉単価が大きく低下する。すなわち低粗利率営業により同一顧客の滞留時間と来店頻度の向上が期待できるコンテンツをメイン機種にし、競合店Cの常連顧客を取り込もうという施策のように見えます。パチンコ戦略のザ・王道ですね。
店舗Bのコア戦略の軸は『牙狼MAXX』と『大海4』。共通するのは高稼働の天井付きスペック。天井付近の期待値狙いをするプレイヤーも多く、ターゲットは情報収集能力のある勝率狙いファン。パチスロ高射幸性ユーザーのパチンコ流入層など、今後パチンコの成長を支える新しい顧客ターゲットです。
戦術は戦略に従う
店舗Cの大型リニューアルに対して、対抗している点は共通ですが、両店の戦い方は全く異なります。
店舗Aの団塊世代とそのジュニア世代の保守層をターゲットとした王道の戦略が成果を出しているのは「集客力」ではなく「定着力」です。それはデータ分析システムを右クリックし、機種別詳細やギャップ分析などをしても分かるはずもありません。他店のファン(奴の彼女)を自店のファン(俺の彼女)にするためには、デートにいくら金をかけようが、豪華なプレゼントを贈ろうが「キッカケ」にはなっても「決定打」になることはないでしょう。
好きになるというのは「損得勘定」ではなく「体験による感情」です。「勝率」も重要ですが「笑率」のほうが心を動かします。それらの感情を動かす体験づくりはなかなか目に見える形でとらえることはできません。これをファン作りのステルス戦略と呼びます。
一方で店舗Bの新規性と若年~ミドル層をターゲットとした戦略はステルス戦略とは真逆です。
集客の要は44台で高稼働の『牙狼MAXX』と44台で高稼働の『大海』であり、天井付きの名機に集うのはオールドタイプ(主に団塊層)<ニュータイプ(主にミドル・若年層)です。彼らはスタートというボーダーで戦うよりも、天井までの残回数×千円スタートによる損得期待値で立ち回ります。この方法だと長時間遊技を強いられることなく、一時間強(最長350回転勝負)でワンセット立ち回れます。ボーダー越えの『北斗無双』を終日狙うよりもはるかに効率的です。
ワクチン浸透後の業界動向を見極めれば、『海物語』、『甘デジ』などの元来のパチンコファンの二割程度は完全離反していることは明白です。しかしパチンコの業績は成長傾向にあり、支えているのは【勝負を運ゲーではなく、状態を見極めつつ能率を上げていく期待値ユーザー達】です。
店舗Bはボックスの『牙狼』と『大海4』がフル稼働している状態なので理論値として台数×15%(600回転ハマる確率)の期待値狙いが可能な台が存在します。常に10台以上のお宝台(お宝調整ではない)がランダムに発生する。これが期待値キッズたちを惹きつけてやまない理由なのではないでしょうか。
これはA店が実行しているファン作りへのステルス戦略とは異なり、期待値キッズへ向けたDX時代の完全な視える化戦略と言えるでしょう。
店舗C対策は同じですが、具体的な戦略や戦術は全く異なります。古くから業界では戦術が全面的に取り上げられ、HOWTOを示すことがコンサルタントの価値だと誤認されていた時期がありますが、今の時代HOWTOは効きません。効かないというか戦略なき戦術には意味がないということですね。
さて、話が長くなってしまいましたので、続きはまた。次回は、近未来に訪れるであろう「パチンコホールの商圏の変化」と、「期待値キッズ」たちの集客手法について考えていきたいと思います。
この記事を書いた人
ノンブル・マーケティング代表
斎藤 晃一 Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する