前回の続き(「3つの生き残る道」はこちら)です。
パチンコホールにおける「3つのポジショニング」を考えてみましょう。
差別化軸その一「商品軸」
地域一番店を狙う大型店が該当します。
最高の環境/設備の中で、最新台~定番機までの品揃えで圧倒し、良質な価格で顧客を迎える。コア品質では敵なしの状態を作り、不特定多数を集める高コスト&高粗利営業が基本戦略となるでしょう。
収益を出すために必要なことはコストを圧縮すること(品質低下は戦略に反する)ではなく、徹底して客数を増やす(売上追求)ことです。集客と顧客満足に費やすコスト以上に売上(粗利)が上回るほどに【商品軸の強み】は益々強くなります。
ありがちなのが、【最高の環境】で【最高の商品】を【最低の状態】で提供する残念な商品軸店舗です。それは店側の都合(高投資)を顧客に押し付ける(高粗利)だけであり、サービスの押し付けです。時限的には儲かっても、永続性はないでしょう。故に戦略指標は「客数」「稼働」「シェア」といった集客に関連する必要があります。
差別化軸その二「手軽軸」
地域一番の低玉店舗が該当します。
顧客の人生の一部を担い、少しでも多くパチンコを楽しんでいただきたい。その為に参入障壁を下げ(投資抑制)、購買頻度の向上(粗利抑制)を実現する。楽しい体験を安く売るが基本戦略です。
収益を出すために必要なのは生産性の向上と仕入れの工夫です。安く売れば(貸玉を下げれば)儲かるのではなく、低コスト運用が可能だから安く売れる。手軽軸の代表企業であるダイナムはローコスト経営の一人者だからこそ低玉中心のビジネスで多くの利益を生出せている。多業種で言えばファッションセンターしまむらのビジネスモデルに類似しており、小商圏×低単価でも成立する仕組みづくりを極めるほどに【手軽軸の強み】は強固なものになります。
誤解してはならないのは、低玉戦略とはローリスクで気軽に始められる【気軽軸】ではないということです。緻密な計算と生産性の向上が不可欠な事業だからこそ、高単価を扱うどんぶり勘定の自信家達が陥る罠があちらこちらに仕掛けられています。
戦略指標は「台当たり維持費」「時間粗利損益分岐点」など低コストオペレーションと低価格戦略にまつわる数字がメインです。
差別化軸その三「密着軸」
顧客に寄り添う地元の店が該当します。
決して繁盛店ではないが、離れない常連客によってえられる店です。そのために必要なことは、顧客への興味関心と個別対応のサービスです。
数字を通したマネジメントではなく、顧客の行動と結果を通じた財布マネジメントです。
顧客の情動に寄り添い、人生に寄り添う共感力です。顧客を知るほどに【密着軸の強み】は強固なものになります。
この密着軸は単独でも機能しますが、商品軸と手軽軸と掛け合わせることでより効力を発揮します。
デパートでは、顧客の顔のデータベースにより似合う服、色、化粧などを提案していくサービス。手軽軸では顧客の購買履歴から何時も購入する商品の割引券の贈呈など顧客のデータベースより反応がとれるサービス提供の自動化を進めています。デジタルを通じて業務効率と顧客の幸せを創造する世界をDX(デジタルトランフォーメーション)と称します。これも密着軸の進化であり、この流れはパチンコ業界にも採用されることでしょう。
暗中模索、混沌とした時代と称されることが多い時代ですが、なにも混沌としたことはありません。生き残る為に、儲かる場所、勝てる場所で戦うだけです。もし儲かる場所、勝てる場所がないのならば戦って敗れる前に、戦わない選択をすればいいだけです。
間もなく新しい時代の幕が明けます。儲かるポジションはあるか否か?戦うか否か?未来は一目瞭然であり、決断はいたってシンプルです。
今回は三つの差別化軸という考え方を通じて、顧客に選ばれる為のポジショニングというテーマでお話をさせていただきました。
次回はマーケティング講座その二、エリアマーケティングについてのお話をさせていただきます。
この記事を書いた人
ノンブル・マーケティング代表
斎藤 晃一 Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する