パチンコ客数減少が示す未来への警笛 -実践主義マーケターからの提言-

パチンコの稼働構成比の減少が続いています。その兆候は昨年の夏以降に現れ、スマスロ登場で決定的になりました。昨年末の『ゴジエヴァ』の登場で形成を持ち直したパチンコは、続いて登場した名機軍【牙狼、慶次、無双、海】による圧倒的な火力(新台で6倍の格差)で仕掛けますが、モンハン+実績機の増台とコンパクトな戦いを仕掛けたパチスロに歯が立たず、客数比率を落とす形になりました。

パチンコはオワコンなのか?

パチンコはオワコンなのかという論争は【誰にとって】という定義がなければ無意味です。
旧世代にとってはパチンコも4大コンテンツも女房より大切な伴侶でしょう(ただし伴侶は若いに尽きる)。勝率重視のヘビーユーザー(軍団)にとっても技術介入でボーダーコントロールできるパチンコはなくてはならないコンテンツです。

しかしある程度トレンド(パチンコに限らず)に敏感で感受性が豊かな層にとってはパチンコはオワコンだということは何年も前から言われていたことです。その要因は天井救済がないこと、ゲージという不確実なもので出率が変化することにより、期待値計算ができないためです。
確率という不確実なモノ×ゲージという不確実なモノ=無限の可能性という超ポジティブ脳が備わっていない凡人にとって、パチンコはブラックボックスに等しいものとして映るのではないでしょうか。思慮分別のある大人にとって不確実なパチンコはオワコンだと私は考えています。

既存のP機がスマパチに変わり、業界は再成長に向かうのかという議論も、ゲーム性や射幸性によるもの以上に【期待値計算ができるか】が最も重要な論点です。しかし釘が残り、天井がない時点で状況に大きな変化が起こらないことは容易に想像ができます。天井のないガチャを笑顔でキャッキャ言いながらぶん回せるのは子供くらいでしょう。(スーパーのガチャガチャです笑)。一昨年の牙狼月虹の旅人のヒットによって期待値計算できるパチンコ時代が幕を開けたと思わせましたが、暗闇に光る月虹のごとく【最大の射幸性追求】というメーカー自らの天井機への冒涜により、史上最高の天井機の運命は終わりを告げました。

パチンコの成長の【中身】と【リスク】はなにか

ここ数年のパチンコバブルはパチンコ自らの成長ではなく、パチスロの衰退という不可抗力に支えられた成長です。顧客は積極的にパチンコを遊技しているのではなく、消極的かつ打算的にパチンコを選択した結果とも言えます。
6号機とパチンコ新基準機における2万5000発(5000枚)期待値はパチンコがパチスロの10倍ほどの格差となり射幸性という観点から比較にならないほどの実力差が生まれました。
その結果、どの程度のパチスロからのパチンコへ市場流入が発生したかをパチンコ業界の稼働&粗利グラフから読み取ると【稼働比率】で5%前後の移動が確認でき、【粗利比率】では13%前後の移動が確認できます。
この数値から二つの指標を導きましょう。

① 5号機全盛のパチスロの粗利の約31%がパチンコへ移動した
② 客数比率が1%変動すると粗利比率は2.6%変動する

これは興味深いデータですね。現在のパチンコ粗利の約30%はパチスロ流入客に支えられているというエビデンスとして十分な数値だと思います。

2023年、スマスロ&スマパチ時代にこの状況はどう変わるのでしょうか。まずは射幸性の変化から確認しましょう。スマスロ登場(参考ヴヴヴと牙狼GOLD)によって2万5000発(5000枚)獲得期待値の格差はなくなりました。4万5000発(9000枚)獲得期待値ではパチスロがパチンコの6倍程度のポテンシャルがあります。現時点では最大出玉の期待値はパチスロに譲ったことになります。
※5号機時代は全ての帯域でパチスロが圧倒的に優位でした

これを迎え撃つようにスマパチにより大当たり確率が1/319から1/349へ引き上げられ、C時短を活用した大当たりの引き戻しによって最大出玉の拡大が図られるようです。
パチンコ、パチスロによる仁義なきコンプリート戦争という様相ですが、パチンコの設計の仕様上コンプリート発生頻度はパチスロよりも大分劣るはずです。
※詳しい説明は専門家のコラムをご参照ください。

最大MYを競うという勝ち目のない戦いは原理原則でいえば無意味な戦いと思うのですが結果はいかがなものでしょうか。5号機撤去による【射幸心による絶対優位】という棚ぼたの勝利の先に目指す【パチンコの強み】を活かした戦い方とは。その解答が一年後にパチンコの新台として提示されるのを楽しみに待ちましょう。

昨今のパチンコ流出が警告する業界の未来

業界客数ビックデータNO,1であるメディアシステム社のエンタープライズの統計データを参照すれば、パチンコの客数が低下し、パチスロ客数が上昇しているのは一目瞭然です。ここ最近の特徴は平日におけるパチスロ客数の続伸、および休日におけるパチンコ客の減少があげられます。言い換えれば、平日のパチスロ続伸⇒ヘビーユーザーのパチスロ選択となり、休日のパチンコ離れ⇒ライトユーザーのパチンコ離反と定義できるのではないでしょうか。

ではこのパチンコ流出、衰退の兆候は本当に【射幸性のアドバンテージの変化】によるものでしょうか。グラフにも表れているように、パチンコが大きなダメージをうけたのはスマスロの登場です。しかし、現在のパチスロ躍進を大きく支えているのはカバネリであり、そのカバネリの2万5000発(5000枚)獲得期待値はエヴァ咆哮の1/3以下です。最大の射幸性を持つヴァルブレイブは一定の安定した支持を得ていますが、パチンコにとっての脅威というほどではありません。

昨今のパチンコ業界の特徴を再度整理します。

① パチスロの最大成長トレンドは射幸性に劣るカバネリである
② パチンコ客数が減少してもパチスロがそれ以上に増客し全体客数は105%成長
③ パチンコの粗利規模は高い水準で維持されている
④ パチスロの粗利規模は順調に回復を続けている

あれ?あれあれ?

総客数は増え、総粗利は増えている。
パチンコの客数の衰退により業界全体が活性化している。

業界成長への勝ち筋が見えました。
4円パチンコ客数を低下させることです!

次回、誰も触れさえしない見えざる真実に迫ります。
こうご期待(笑)

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する