本コラムはあくまで業界のいち開発者の個人的な主観による独り言ですので、その点ご認識のほど。
毎度ながら念押しでございます。
今回は少々センシティブな内容を含みます。
最近いくつかの機種で搭載されている「設定L」。
出玉率が極端に低くなっており、プレイヤーが万が一設定Lに座ってしまうと確実に負けます。
事故って運良く出ることも100%ありません。
プレイヤーからすると、
「メーカーがホールに忖度して絶対に客から毟り取る設定を搭載してきやがった!」
「どんだけ客から吸い上げれば気が済むんだ!!」
という感じでしょうか。
ホールの方でも、
「何で設定Lなんて搭載してるのか意味が分からない」
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事を書こうと思ったのも、実際にホール関係者の知人から質問をいただいたからです。
なぜ開発は設定Lを搭載することになったのか。
結論から言うと、
より出玉性能の高い遊技機を市場に送り出すため
です。
言い換えると、
出玉性能を高く設計した遊技機の適合率を高めるため
です。
では、なぜ設定Lを搭載すると適合率が上がるのか?
そこを説明するには、まずは保通協で行われる出玉試験について大枠だけでいいので理解していただく必要があります。
わかりやすいように専門用語をなるべく避けますのでご了承を。
出玉試験
いわゆるAT機・ART機の出玉試験は、大きく分けて4つあります。
①シミュレーション試験
俗に言う「神打ち」。
成立した小役・ボーナスを問答無用で全部取得します。
配列上同時に狙えないとかも関係無しです。
押し順ベルなんかも全て枚数の多い役を取られます。
高確率で成立する小役で出玉を増やすAT機ではこの試験の対策は必須。
いわゆる「ゼロボ」などは、このシミュレーション試験で性能の低いボーナスに当選させてこの試験をクリアするための仕様ですね。
②ランダム試験
目押しなしの適当打ち・押し順ランダム。
出玉率の下限に引っかからないよう注意が必要です。
③市場打ち試験
市場のプレイヤーと同じ打ち方、最も出玉率が高くなる打ち方をする試験。
通常時は小役を目押しするし、AT中にナビが出ればそれに従います。
出玉の上限を見る試験なので、最も出玉率の高い設定6は必ず試験されます。
設定6のダラダラグラフは出玉が暴れないように設計することで出玉率を上げつつ、この試験での適合率を上げるための結果です。
なので、この試験で暴れる設計をした設定を打たれてしまうと適合率は大きく下がります。
回胴の適合率が一向に上がらないのはここが大きな要因です。
④下限試験 ←New!!
ペナルティ容認の際に新たに生まれた試験。
ペナルティを使ってベースを削る訳ですが、やり過ぎるとこの試験で出玉率の下限に引っかかることになります。
「下限試験」なので出玉率が最も低い設定のみ試験するんですが、厄介なのは、下限試験といいつつ出玉率の上限に引っかかると不適合になっちゃうんですよね。
大体どの機械も設定1は荒く設計するので、素直に作るとこの下限試験の適合率が大きく下がることになります。
ちなみにこの試験の特徴として、AT中にナビが発生した際、押し順には従いますが目押しはしません。
押し順のみの低・中純増機だと③試験と同じAT性能となってしまいますが、リゼロなどの高純増機にあるような目押し+押し順であれば、ベルが1/2でしか揃わなくなるのでAT性能は大きく下がり、適合率には影響しないことになります。
この新たに生まれた下限試験が、押し順のみの低・中純増機にとって致命的な問題となってしまったのです。。。
そこで、この問題を解決するために生まれたのが下記2つの手法です。
- 低・中純増でも目押し+押し順にする
- 最低設定を下限試験にほぼ適合するように設計する
目押しを入れるのはプレイヤーの幅を狭めることにもなるし、「目押しさせといて純増低いんかい!」と感じるプレイヤーが多く理解は得られにくいのではないか。
(実際この手法を選択した機械もありますが)
それで、色々な対策を施した上で設定Lを搭載する流れになっていったわけですね。
ということで繰り返しになりますが、設定Lを搭載するのは
低・中純増機の適合率を高め、出玉性能の高い遊技機を送り出すため
決してプレイヤーを負けさせたい訳ではありません。
なので開発としては、何とか「設定Lをホールで使われない・使わせない」ための工夫を考える必要があります。
いくつか実際の例を挙げてみます。
・某アイドル系機種
設定2を1番出玉率を低くしその他の対策は控えた形でした。
ただそれだとホールでは普通に使われることとなってしまい、プレイヤーも気付かず打ってしまうという結果でした。そこまで出玉率が低くなかったのであまり話題にはならなかったことが唯一の救いでしょうか。
・某ヤンキー系機種
設定Lのみデモで下パネルが消灯するというパッと見で分かる対策。
それでも下パネ消灯してオープンしてしまうという残念な事例はありましたが、
プレイヤーにも認知されかなり話題になりました。
・某●●系機種(諸事情により完全伏字で・・)
そんな中自分が1番効果的だと思ったのは、「そもそも設定Lの存在を公表しない」という対策。
メーカー内でも開発から営業に詳細を伝えない。
営業は詳細が分からないのでホール様に説明出来ない。
ホール様は得体が知れないのでその設定を怖くて使えない。
メーカーとしてコンプライアンス的にどうかという問題はありますが、誰も損しないベストな対策だと思います。
※これについては様々な意見があると思います。あくまで個人の感想です
長くなってしまいましたが、 自分の意見を好き勝手述べてまとめとしたいと思います。
- 設定Lは、より出玉性能の高い機械を送り届けるための開発努力の賜物です。
ホール様やプレイヤー様を陥れるためのものではありません。 - メーカー様
設定Lを公表しないことを是非ご検討ください。
自分としては、これが一番win-winな方法だと思います。 - ホール様
設定Lは絶対に使わないでください。
メーカーもプレイヤーも全く望んでおらず、信用を失うだけです。 - プレイヤーの皆さん
設定Lを見かけても絶対に座らないでください。
確実に負けます。
なぜなら試験を100%通すため上振れしないように設計されているからです。
ということで、設定Lについては色々なご意見を拝見しましたので、開発からのメッセージがホールさんやプレイヤーの皆さんに伝わればと思いまとめてみました。
相変わらず主観だらけの長文駄文で恐縮ですが、少しでもご参考になれば幸いです。