Global Pachinko株式会社の長北(https://x.com/global_pachinko)でございます。
長北、実はカジノやってました。日本では違法となる行為に手を染めてしまったこと、大変申し訳なく思いません。
というわけで、数年ほどオフラインカジノで勤務してきた経験や、勉強してきた知識を基に、カジノとパチンコの違いについて語ってみようかとおもいます。
敵を知り、己を知らば百戦危うからずとはよく言ったもので、自社に訪日客を呼ぶとなった際にライバルのやり口を理解するのは最低限必要なことでしょう。
想定予算
カジノ=客層により大きく幅があるものの、中央値は5万円~20万円程度
パチンコ=遊技するスペック・レートによるものの、2万円~5万円程度
滞在時間
カジノ=数時間から半日程度
パチンコ=数時間から半日程度
食事
カジノ=併設されている飲食スペースで食事をしつつ遊ぶ。
パチンコ=一部郊外店、大型店を除き、食事は外で(他で)。
サービス
カジノ=ディーラー、ないしはコンシェルジュが対応。ゲーム上の不明点についてはディーラーが回答、カジノ内の配置、ルール、サービス等はコンシェルジュが対応し、日英中韓程度の言語であれば常時選任のコンシェルジュがいる。
パチンコ=スタッフによるサポートは原則トラブル時、機械操作時のみ
事前知識要求
カジノ=原則不要。ビデオゲーム(ビデオスロットに限らず、ビデオバカラ、ポーカー等含む)については操作について多少の事前理解が必要なものの、各席のディーラーやコンシェルジュはゲームについての詳細な説明だけでなく、ハウスエッジ(カジノ側の取り分)についても説明の義務がある。
パチンコ=話題にあがりがちな三店方式にとどまらず、入口、閉店時間、ハンドルの握り方、スペックごとのリスクレベル(平均投資額)。パチスロについてはゲームフローを理解するのに20分~30分程度の予習が必須なケースもある。
勝ち額の最大値
カジノ=数億円
パチンコ=38万円弱
その他
・責任あるゲーミング(Responsible Gaming/レスポンシブル・ゲーミング=ギャンブル業界においてプレイヤーが安全かつ適切な範囲でゲームを楽しめるようにするための概念)の明示有無
レスポンシブルゲーミングについては耳慣れない方もいらっしゃると思うので長めの追記をしますが、一般的には以下の項目に分かれています:
1.ギャンブル依存症の予防と支援
2.プレイヤーの自己管理支援
3.透明性の確保
4.未成年のギャンブル防止
5.従業員の教育
6.社会貢献
こうして見ると、3以外の項目についてはパチンコ業界は既に実施しているものですね。3についてさらに補足すると、これは『各種の確率や期待値を明確にする』ということで、要するに『このゲームをすることであなたは負けます』をプレイヤーに伝えるということになります。
パチンコ業界については『勝てますよ、勝ちやすいですよ』が広告戦略の主軸となっている点で、カジノ業界とは真逆といえます。
一般的なカジノにおいてはカジノゲームは継続すれば100%負けるもの、という認知の基に集客をしています。昨今問題になっているオンラインカジノに関する広告ですら、『出ます勝てます』といった類の伝え方はほとんどしていないですね。
その他の項目については特に説明は不要かと思いますし、省きます。
なぜ『負けますよ』と伝える必要があるのか
これには単に広告規制の問題も大きいのですが(カジノにも広告規制はあります)、もう一つの大きな理由として、カジノに原則不要な客である、有害なゲーム行動(Hazardous gaming)を行う顧客(=いわゆるステレオタイプ的なギャンブル依存症、ギャンブルを行うために必要以上のリスクを取りすぎて、資金だけでなく社会的信用等が減少を続けている状態など)の排除を行うためです。
これは少し本筋と外れますが、危険なゲーミングを行う顧客を排除する理由をいくつか述べると『LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)が著しく低い』『危険なベッティングを拡散させる』という二つの理由があります。
要は、すぐ破産するから長期で見たときに売上が低くなる、周囲のプレイヤーまで同じ行動特性に引き込みだす(=周りまで破産させかねない)ということです。
『違い』を理解した上で考えるべきこと
ここまでは淡々とお伝えしてきましたが、それを理解してどうするか、というところですね。
既にそこそこの文章量となってしまったので、簡単にまとめますが、カジノと比較した際の大きなポイントはゲーム性が複雑な上にそれを教える/教育するサポートがなく、少額の勝ち額を目指すゲームで、『勝てない』を明確化していない、という3点になります。
広告上の勝てる勝てない問題は語ると長くなりすぎますし、ここではゲーム性を教えるサポートについて、可能な範囲でどうするべきかというところで一旦の区切りとしようと思いますが、これは究極的に、プレイヤーの支援が無ければ成り立たない。というのが私の見解です。
これまで別媒体のコラムも含め、過去『まずは設備を整えるべし』『台間POP等、ゲームフローを見える化すべし』と語ってきたのは、この結論に基づいています。すなわち、一般プレイヤーが新規プレイヤーに教育するサポートをするべしという事です。
店舗やメーカーがどう頑張ったところでハンドルを操作する機微は法改正を挟まないと教えられないですし、毎月20機種近く販売される機種について店員が全て理解するのは無理筋です。
ある程度経験のあるプレイヤーですら新台の遊技フローを全て理解しているとは言えない現状を鑑みるに、それこそパチプロあたりを動員して訪日客含む新規プレイヤーに教育させる。自分の狩場に自分で餌を撒かせる、という動きがあってもいいんじゃないんでしょうか。