新たな扉を開ける!!日本サッカー森保一監督の五事七蹴 -実践主義マーケターからの提言-

いま本当の恋が始まる

鈴木雅之「ざわめくスタジアムの中で、僕より先を急ぐこの思いが♪」
菊池桃子「7分前♪」

本田圭介「ロスタイム7分!?!!!こんなんドイツ戦でも言ってましたよね、オレ」
アナウンサー「今ホイッスル!!再び世界を揺るがす日本の勝利です。ドーハの歓喜再び」

早朝の渋谷スクランブル交差点、約30年前におきたドーハの悲劇の記憶すら覚束ない若者が、海の向こうで繰り広げられる熱狂と歓喜、いや戦争や祭りに近い陶酔のような渦に飛び込み、警護されながら歓喜の輪を作っています。

アメリカワールドカップで、ハンスオフト監督の下で、井原が滑り、柱谷が跳ね、ラモスが舞い、中山が吠え、福田が疾走し、カズが決める。

私が恋焦がれた世界とは別の世界で、堂安のグランダーのパスに三苫が滑り込み、田中蒼が体ごとボールをゴールに捻じ込み、無敵艦隊スペインを沈め、決勝トーナメント進出を決めました。

そのゴールが生まれたのは日本時間でちょうど午前5時を指していました。

決勝アシストを決めた三苫薫と決勝ゴールを決めた田中蒼は小学生から同じチームでプレーし、プロとして川崎フロンターレで再びチームメートになりJ1で優勝。別々に海外へ活躍の場を移すと日本代表で三度チームメートになり、スペイン撃破の主役を演じます。

試合後、勝利を確かめ合う決勝ゴールをあげた田中蒼は三苫に「来ると思った?」と尋ね、決勝アシストを決めた三苫は「来ると思った」と間髪言わずに答え、抱きないながら笑う姿が世界に配信されました。

この漫画のようなドラマチックな風景と共に私の脳裏に流れたのは、奇しくもドーハの悲劇が起きた1993年にヒットした鈴木雅之×菊池桃子によるヒットナンバーです。
鈴木雅之×菊池桃子 「今日も渋谷で五時。二人でサボタージュ」
鈴木雅之×菊池桃子 「ちょうど渋谷で五時。いま本当の恋が始まる」

稀代の兵法家、孫子の五事七計

孫子の有名な言葉に「道、天、地、将、法(どう・てん・ち・しょう・ほう)」があります。

【道】とは、大義である。と記されています。

どこを目指すのか。なぜそこに向かうのか。どのように達成するのか。なぜ勝てるのか。
それぞれは何を成し遂げるのか。 群衆が納得し、心を震わせ、一団となって果敢に戦う為に【道】は欠かせません。

【天】とはタイミングである。と記されています。

天の動き。風、雲、陽射し。気温。組織と環境、内外の時機が合致しているだろうか?今が「その時」か?を見極めずして勝機はつかめません。

【地】とは強みである。と記されています。

地の利はあるのか。守りに固く、相手を攻めるに適しているか。敵を知り、己を知り、バトルフィールドを熟知していなければ勝利を収めることは出来ません。

【将】とは人である。と記されています。

リーダーの資質や能力は十分か。兵に共に戦い、全てを捧げてもいいと思わすことができなければ部隊の士気は上がりません。ドラッカーの「真摯さ」そのものです。

【法】とは規律である。と記されています。

法が守られなければ組織は成り立ちません。組織が機能しなければ戦略を遂行出来ず、個人のスキルなしに戦術実行は出来ません。個人の力を組織の為に活用する規律なくして勝利することは出来ません。

孫子は常に五事を考え、戦いに備えよ。と記しています。

また自軍とライバルの七つの項目を徹底して比較し、勝算がなければ戦うなと説いています。

七つの項目とは、
道・・・どちらに大義があるか
将・・・どちらの将が有能か
天地・・・どちらが天の時、地の利に優れているか
法令・・・どちらの組織に規律があるか
軍隊・・・どちらの兵力が勝っているか
兵・・・どちらの兵が訓練されているか
賞罰・・・どちらが正しい賞罰をしているか
になります。

孫子は、「勝利の軍は開戦前にまず勝利を得てそれから戦争をしようとするが、敗軍はまず戦争を始めてからあとで勝利を求めるものである」と言います。

鈴木雅之×菊池桃子 「今日も孫子の五時。比べて七計」
鈴木雅之×菊池桃子 「ちょうど渋谷で五時。いま本当の戦が始まる」

スマスロで変わる道・天・地

行き過ぎた射幸性の抑制を大義として撤去された5号機により、パチスロの粗利規模は40%低下。パチンコと異なり、長期寿命の機械と抜群の粗利貢献によりパチンコ業界の営業利益の半分の利益を生み出していたパチスロは壊滅的な影響を受けました。そして、新規則機入替に多額の投資を強いられるパチンコ業界はここ3年間で3000軒あまりのパチンコ店が破綻し、3000人の店長と5万人程度の雇用が失われる大惨事にみまわれました。
今後もスマスロ、スマパチへの変換などの多額の投資により、さらに500店舗の経営破綻と1万人程度の雇用喪失が発生するとみています。

一方で全国のパチンコ需要とパチンコ台数供給のバランスを見ると、現在の店舗や台数は十分に、経営が成立する基準にあるのです。

ではどうしてパチンコ店の経営破綻が続くのか?

ズバリ、五事七計が出来ていないからです。
業界の未来予測(天)、バトルフィールドのリサーチ(地)、自社の強みを活かした戦略策定と予算算定(道)が曖昧なまま、必要に迫られて投資や戦術を繰り返す。

まさに「敗軍はまず戦争を始めてからあとで勝利を求めるものである」という言葉通りです。
経営破綻の10%は五時七計を怠ったことによる人災なのではないかと疑ってしまいます。

では来るべきスマスロ・スマパチ時代に何が起こるのか?を箇条書きでまとめます。

①射幸性アップによる商圏の拡大
②パチンコからの流入(離反回復①)
③休眠顧客の回復(離反回復②)
④勝ち金額&投資リスクによるヘビーユーザー化
⑤機械・設備に対しての継続的な投資

①~⑤を適切に実行することによってパチスロの粗利規模は2022年に対して1.3倍の成長を成し遂げる予想です。
その拡大(回復)する年間2400億円のAT市場に対してどのようにアプローチをするのか?激変するAT市場はピンチなのか、チャンスなのか?的確なリサーチと様々な仮説を用いて五事七計を考察してみてはいかがでしょうか。

森保一監督の五事七蹴

勝てる場所、成果が出せる場所はどこか。
戦わずして勝てる方策はないか。戦って勝てる可能性はないか。
システムチェンジや交代によるリスクと見返りを想定し、実行する意味があるか。
私たちが勝てるエビデンスと戦略実行できる戦力を有しているか。
それはいつ実行し、いつ成果に結びつけるのか。

ドーハの悲劇のメンバーである森保一監督の示す【道】は非常にシンプルで分かりやいモノでした。

目指すゴールは、ベスト8以上
大義は、日本サッカーの新しい扉を開けるとともに、今一度世間の目を日本サッカーに注目させること。
具体的な方策は前半戦で相手を疲弊させ、後半勝負。
勝算の根拠は日本人の持つ俊敏性と耐久性。これはかつて代表を率いたザッケローニ監督も指摘したストロングポイントです。
前半は相手にワイドにボールを回させ続け、後半に前線より一気にプレスをかけて相手陣内で剥ぎ取り、ゴールをもぎ取る。

スペイン戦の堂安律の同点ゴールのシーンでは、三苫が相手のサイドバック深くにプレッシャーをかけ、ゴールキーパーへのバックパスを前田大然が必要に追いかけ、ゴールキーパーの苦し紛れのパスを伊東純也が奪って堂安へ。

本田圭佑も語っていましたが、ここぞとばかりに自分のマークを捨て、リスクを背負ってでも前に出てボールを奪った伊東純也の勇気あるチャレンジなしに日本の同点ゴールは生まれませんでした。

勝利へのシナリオを描き、勝負ポイントを見極め、戦略を浸透させ、個々の仕事を明確にし、選手の持てる潜在的な力を限界まで引き出す。

大会前、森保監督は独創的なアイデアもカリスマ性もなく、戦略性もないと批判されてきました。
それでもドイツを破り、スペインを破り、多くの人が不可能と感じた死のグループを第一位で突破し日本サッカーの新しい扉を開きました。

そして前回準優勝国であるクロアチアを土俵際まで追い込んだ手腕は誰もが評価していることでしょう。

戦略家でも戦術家でもモチベーターでもなく、時に大胆な采配をとる掴みどころのないスタイルを、誰かが【気遣いの勝負師】と名付けました。

ドーハの悲劇のメンバーでもあり、前回のロシア大会ではベスト8をかけたベルギーとの一戦で一時は2点リードしたにもかかわらず逆転負けを喫したロストフの悲劇のコーチを務めた森保一監督は誰よりも傷ついた経験の持ち主といっても過言ではないでしょう。

皆さまは【傷】の三段活用という言葉をご存じでしょうか。

傷つき、気づき、築かれる

傷つくからこそ、気付くことがある。
気付きがあるが故に、築きあげることが出来る。

森保一監督は誰よりも傷ついた経験があるからこそ、気遣うことが出来る。
気遣うからこそ築かれる関係性こそが、今回の日本サッカーの神髄のような気がしています。

大会を終えて、鎌田大地は「個を犠牲にしてまでチームの為に貢献したのは中学校以来」というコメントを残し、風邪で無念のリタイアとなった久保建英は「試合後も忘れてもいいのに僕の部屋に来て労った。気遣いの素晴らしい監督だ」とコメントを残しています。

PK戦で最初キッカーを務め、ゴールを逃した南野拓実に対しては「PKを1番に蹴ってくれてありがとう。この大会で大変な役回りになったけど、嫌な顔を一つせずチームを支えてくれてありがとうと」と感謝を伝え、南野は号泣しました。

気遣いの勝負師、ぴったりの名称ではないでしょうか。

日本のベスト8への挑戦は双方7回のキックで幕を閉じました。

帰国後、森保監督は報道陣を前に「PK戦になっても、そこまで含めてゲームプランを持っていたつもりですけど、PK戦は準備の仕方が足りなかったかなと、自分自身の反省としてあります」

ゲーム展開とそれに呼応する戦略【五事】は出来ていたが、勝敗を決する【七計】で劣っていた。
その七計の差がPK戦を決定づけた七蹴の差であったということでしょう。

日本サッカー協会がある文京区湯島では日本サッカー協会会長の田嶋氏と日本代表森保監督がこの七蹴をプレビューし、要因と対策を練り、ベスト8へ向けて新たなメロディを築くことでしょう。

 

田嶋幸三×森保一 「今日も湯島で五時。七蹴プレビュー」
田嶋幸三×森保一 「ちょうど湯島で五時。いま本当の蹴が始まる」

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する