SNSを味方につける -ビジネスライター 綾香の視点-

初めまして、ビジネスライターの綾香です。
私はこれまで様々な企業や店舗の取材をし、ビジネス誌を中心に執筆してきました。ここでは毎回、世の中の気になるビジネスの動きについて、私なりの分析と感想を述べていきたいと思います。

今回のテーマはSNS。種類としてはラインやツイッター、インスタグラムとさまざまですが、共通点はスマホなどで消費者と直接つながり、いわば“懐に入る”ように情報を届けられること。今や商品やサービスの宣伝手法として、企業のイメージ戦略として欠かせないツールとなっています。
ただ、その使い方に関しては各企業それぞれ個性があるようです。ツールの特性やユーザー層を理解し、非常に上手く使いこなしている企業では、発信のたびいわゆる「バズる」という状況が出来、何十万というユーザーに勝手に拡散されていきます。
お金をかけてテレビCMなどの宣伝をする必要もなく、それどころかマスコミに取り上げられるきっかけになることも。テレビともなればSNSに比べ格段に広い層への訴求力がありますから、爆発的、長期的なヒットにつながることも夢ではないのです。

自ら発信しないSNS戦略とは?

最近、SNSの使い方で私が注目しているのが、あるバーガーチェーンです。米国に本社のあるチェーンですが、日本での経営には過去、紆余曲折があり、近年やっと日本法人としての体制を整えたばかり。そうした理由もあり、店舗数も知名度もあまり知られていませんでした。しかし、同社はそこから猛攻勢をかけます。その武器となったのがSNSです。
同社ではSNSを徹底的に活用し、知名度アップ・売上げアップを実現しました。といっても、商品やサービスが出るたびに情報発信した、というようなものではありません。むしろ、自らSNSで発信しない、というところにポイントがあるのです。
同社が労力をかけるのは、商品そのものです。食べ物屋が食べ物を一生懸命開発するのは当たり前、と言われるかもしれませんが、同社の場合はちょっと違います。
開発チームが頭をひねって考えるのは、例えば「バンズのないバーガー」や「パティが入っていないバーガー」など、常識では考えられないような商品(ですが、商品としてのクォリティはもちろん確保しています)。
これを、消費者が飽き始めるまでのベストなタイミングを見計らって次々に発売するのです。すると「何コレ、あり得ない!」と驚いた消費者が、写真やコメントをSNSに発信します。
SNSユーザーが面白い画像などを発信するのは、「こんなに面白いものを見つけた自分」を多くの人に承認されたいがため。その承認欲求をうまく利用して、自社の商品を宣伝してもらっているわけです。

販促を見越した商品開発〜プロダクトマーケティング

商品の宣伝になるだけではありません。こうした人目を惹く情報がたびたび拡散されることにより、かつてのマイナー企業が大手チェーンに匹敵するほど知られるようになりました。同時に、「面白いことをやっているチェーン」というイメージづけに成功しました。
バズらせるコツは、ネタを見たSNSユーザー全員が「いいね」と思うようなものでなく、賛否両論が起こるようなネタを提供することのようです。なるほど、反対意見ほど発信したくなるというのはよくあること。炎上騒ぎがすぐに起こるのを見ても納得がいきます。
なお、比較的若い層が多い、SNSユーザーに響くネタを提供するのもポイントだったと言います。同社はSNSを活用することにより、それまでの40代男性というコア層からより若い層へと、客層開拓にも成功したようです。
同社の行っている手法は、ビジネス用語で「プロダクトマーケティング」と呼びます。
これは商品開発から販促までをトータルで行うことで、マーケティング担当者が商品開発から関わります。販促を見越しながら、市場における付加価値の高い商品を開発するわけです。宣伝にお金をかけられない同社だからこその苦心の策だったそうです。

以上、SNSを活用したプロダクトマーケティングについてご紹介してきました。しかし今、時代はSNSから、動画を使用した情報提供へと移りつつあり、同社がいかなる動画戦略を繰り広げるのか、今後の動きが注目されるところです。