今さら聞けない「有利区間」 -とある開発者の独り言-

現在設置されているパチスロAT機・ART機にもれなく搭載されている「有利区間」。
もはや一般的な用語となった有利区間ではありますが、何となく名前は知ってるけどどんなものなのか知らない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、AT機・ART機を語る上で欠かせない「有利区間」について、今さら周りに聞けないような基本的な仕組みやこれまでの変遷などをなるべく分かりやすい言葉でまとめてみたいと思います。

基礎的なところのおさらいになりますので、有利区間について理解されているよという方は読み飛ばしていただければと思います。

有利区間とは

まずは有利区間の基本事項をおさらいしていきましょう。
なぜ「有利区間」という名前が付いているのか。それは、
出玉が有利になる性能(≒AT機能)に関する処理を行うことが出来る区間だからです。
逆に言うと、非有利区間では「有利区間への移行抽選」以外のATに関する一切の処理を行うことは出来ません。

ここで言うATに関する処理とは、例えば下記のような内容になります。

  • AT直撃抽選やATの上乗せ抽選
  • 指示(ナビ)抽選やナビの表示処理
  • 通常時やAT中のモード移行抽選やモード移行処理 などなど

「有利区間中しかAT関連の抽選が出来ない」というのはイメージ通りかと思いますが、
「有利区間中しか押し順ナビを表示することが出来ない」「有利区間中しか通常時のモード移行も行うことが出来ない」といった点も頭に置いておいていただければと思います。

有利区間の開始・終了条件

続いて有利区間にはいつ突入していつ終了するのか、その条件です。
まずは有利区間を開始出来る条件。

【有利区間の開始条件】
 ・レバーON時の成立フラグに基づいた有利区間移行抽選に当選した時
  即ち、「ほぼ任意のゲームで有利区間を開始出来る」ということになります。

重要なのは有利区間の終了条件です。

【有利区間の終了条件】
 ・有利区間中の差枚が2400枚に到達した時
  かつてはMY2400枚で終了しなければなりませんでしたが、6.5号機にて差枚2400枚獲得で終了に緩和されました。
  枚数上限に到達した際には強制的にATが終了となり、出玉関連のパラメータが全て初期化されます。

 ・メダル機:有利区間開始から4000ゲーム経過した時
  スマスロ:ゲーム数制限無し
  ゲーム数の上限に到達した場合も同様、その時点で強制的にATが終了となり、出玉関連のパラメータが全て初期化されます。
  スマスロはこのゲーム数上限が無制限になったことがポイントですよね。

 ・設定変更時
  設定変更時は必ず有利区間がリセットされます。
  機種によって、設定変更時の有利区間リセット後とそれ以外のタイミングでの有利区間リセット後でAT抽選のテーブル等が異なるものもあります。

 ・その他の任意のタイミング
  強制的に有利区間が終了となる条件は上記の3つ。
  それ以外にも任意のタイミングで有利区間を終了させることが出来ます。

有利区間ランプの存在

有利区間の基本事項としてもう一点、有利区間ランプについて。
有利区間ランプはプレイヤーが認識出来る位置に搭載されたメイン基板制御のランプです。

5.9号機にて初めて搭載された有利区間ランプは、実装当初
「有利区間移行時に点灯」、「有利区間終了時に消灯」という取り決めとなっていました。

その後、ほどなくして
「ナビが発生する状態に移行した際に点灯」、「有利区間終了時に消灯」という仕様でも問題無いという取り決めに変わっていきます。

ただ、いずれにしろAT中は必ず点灯しており、有利区間終了時には必ず消えるという本質は変わっておりませんでした。

有利区間の頭で強い出玉を持って、「AT→有利区間終了→有利区間開始→再度AT」と意図的に有利区間をまたいで出玉を獲得出来るような性能は基本的にはNGとされております。
即ち、有利区間が終了したタイミングがその機械で最も出玉の期待値が低い状態であるケースが多いということになりました。

有利区間リセット後=パッと見でメダルを入れなくても分かる「有利区間ランプが消灯している台」は期待値が低い状態、という情報が機種共通で一般的になってしまったため、AT終了画面が表示された状態でヤメられた台がその後稼働しないといった状況を生んでしまっていたんですよね。

有利区間に関する内規の変遷

続いて、有利区間に関する内規がどのように変遷してきたか、ざっくりと見ていきましょう。

・5.9号機にて有利区間を初搭載
 5号機の行き過ぎた射幸性を規制するために搭載することとなった有利区間
 当初は出玉面だけでなくゲーム性も大きく制限される非常に厳しい内容でした。

  • 有利区間ゲーム数:1500ゲーム
  • 枚数制限無し(純増2枚規制×1500ゲーム=期待値3000枚)
  • 有利区間ランプ実装(有利区間中は常時点灯)

・6号機への移行
 その後、規則改正で6号機へ移行しますが、有利区間の概念はほぼそのまま持ち越されます。
 さらに出玉率の抑制に合わせるように、期待値約3000枚からMY2400枚制限へ。

 ペナルティ不可の規制により通常時は高ベースにならざるを得ず、1500ゲームの中で通常からATまで詰め込む必要があり、どうしてもゲーム性の幅が狭くなってしまう状況でした。

  • 有利区間ゲーム数:1500ゲーム
  • 枚数制限:MY2400枚
  • 有利区間ランプ:実装(有利区間中は常時点灯→後にナビ有り区間まで消灯もOKに)

・6.2号機にてゲーム数規制緩和
 行政への陳情が実を結び、ペナルティ容認に続いて6.2号機にて有利区間ゲーム数の緩和が認められました。この緩和によりゲーム性の幅が広がるだけでなく、スペックも向上していきます。

  • 有利区間ゲーム数:1500ゲーム→3000ゲーム
  • 枚数制限:MY2400枚
  • 有利区間ランプ:実装(ナビ有り区間まで消灯もOK)

・6.4号機にて有利区間ランプ廃止も可能に
 6.5号機への移行に先駆けて、有利区間ランプの搭載が任意になりました。短い期間ですが、このタイミングの機械は6.4号機という枠組みになります。

  • 有利区間ゲーム数:3000ゲーム
  • 枚数制限:MY2400枚
  • 有利区間ランプ:任意(実質廃止)

・6.5号機にてゲーム数・枚数制限に大きな緩和
 これは直近の話ですので皆様周知かと思います。

  • 有利区間ゲーム数:メダル機 4000ゲーム スマスロ 無限
  • 枚数制限:差枚2400枚
  • 有利区間ランプ:任意(実質廃止)

このように少しずつ緩和を繰り返し現在の6.5号機規制の段階まで進んできたわけですが、一旦はこの6.5号機基準が有利区間規制の終着点となり当面は大きな変更は無いのではないかと考えております。

さらに細かな調整が入りゲーム性やスペックが向上していく可能性もあるとは思いますが、現状の大枠を認識しておいていただければ問題ないかと思います。

有利区間規制緩和による影響のまとめ

最後に
ゲーム数、差枚、有利区間ランプの緩和によってどう変わったのか、ポイントをまとめます。

・有利区間ゲーム数が伸びたことによる影響
 ゲーム数制限が3000→4000→無限と伸びることによって、 スペック・ゲーム性どちらも飛躍的に向上することになりました。
 スペックにおいては現状の6.5号機でも十分進化を感じている方が多いと思いますが、スマスロでは更に波の荒さ・高設定域の出率の高さ等が一回り向上しそうです。

 ゲーム性においても、バジリスクのボーナス回数天井やまどマギの穢れのような長いスパンで出玉を期待させる要素や沖ドキのようなモードBから天国モードを目指す要素など、1500ゲームでは不可能だった仕様が実現出来るようになりました。

 この辺りは過去記事でも書かせていただいておりますのでそちらもご参照ください。

・MY2400枚→差枚2400枚になったことによる影響
 どんなにハマって吸い込んでいても一撃2400枚までしか出ない という認識が、吸い込んだところからなら一撃で3000枚〜5000枚くらいまで狙える という認識に変わった、非常に大きな緩和であったと思います。
 一撃で取り返せる可能性がある、というのはプレイヤーのメンタルに多大な好影響を与えたのではないでしょうか。

・有利区間ランプが無くなったことによる影響
 有利区間ランプの廃止によって、期待値が高いor低い状態であることが、打たなくても一目で分かることがあるという大きな問題が改善されました。
 例えば
 リセット時が甘い機械であれば朝イチランプが消えてる台だけ打たれて後は放置。
 有利区間終了時が最適なヤメ時という機械であればAT終了即ヤメで後は放置。
 ランプを見るだけで分かってしまうことによって起きていたこういった現象が無くなったというのは、一部のプレイヤー以外にとっては良い影響だったと思います。

長くなってしまいましたが、「今さら聞けない有利区間の基礎まとめ」でした。
内規の緩和と各社の開発努力により、6.5号機ではもはや有利区間という概念を知らなくても楽しめる仕様にまで仕上がってきておりますが、有利区間自体は無くなりませんので基本的なところだけでも理解しておいていただいた方がよろしいのではないかと思います。

ご参考になれば幸いです。