強く儚い者たち -実践主義マーケターからの提言-

次期エヴァンゲリオンのタイトルは『エヴァンゲリオン16~強く儚い者たち~』に決定。
というのは冗談です。
「強く儚い者たち」は1997年に放たれたCOCOの名曲です。嵐で遭難し漂流した港で愛する人を想いながら、介抱をしてくれた港娘に淡い恋心を抱き、残した人を想いながらも目の前の愛に溺れていく。そしてこのような言葉で物語は結ばれます。「人は強いものよ、そして儚いもの」
人間の持つ弱さと強さ、道徳と不埒、人間らしい葛藤を類まれな歌詞とメロディに乗せ、今でも多くの人の心に突き刺さっているのではないでしょうか。カラオケでこの選曲をされるとグラついてしまうのは、COCOの破壊力なのか、自分の弱さなのか。

これがもしパチンコの最中に、葛城ミサトの声で「弱くてブレる自分を受け入れても構わないのよ、シンジ君。今を大切に生きなさい」なんて言われたらね……もうケツの毛まで抜かれたらという覚悟になりますね。

機械選びの今昔物語

さて本日は4P戦略の一つ、機械選定についてです。
数ある機種の中から当たり機種を選ぶことは本当に大変なことですが、今から遡ること20年前は機械選定の他に、当たりスペックを選ぶというさらに高度な選定眼を求められた時代でもありました。
具体的に言うと『エヴァ15~未来への咆哮~』は1スペックですが、2007年に発売された『CRエヴァンゲリオン・セカンドインパクト~奇跡の価値は~』は同時に4スペックが登場しました。以下にスペックを転記します。

① CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクトSF
大当たり確率1/397.2 確変割合:67%(内2R確変20%、これを除くと58.75%)
大当たりラウンド:15R・9C or 2R・0C 賞球数:3&4&10&15
※T1Yが最も高い

② CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクトVF
大当たり確率1/399.6 確変割合:72%(内2R確変17%、これを除くと66.3%)
大当たりラウンド:15R・9C or 2R・0C 賞球数:3&4&10&13
※確変継続率が最も高い

③ CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクトXF
大当たり確率1/344.9 確変割合:64%(内2R確変18%、これを除くと56.1%)
大当たりラウンド:15R・9C or 2R・0C 賞球数:3&4&10&14
※当たりやすさ、確変、T1Yのバランス型

④ CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクトMF
大当たり確率1/315.1 確変割合:60%(内2R確変18%、これを除くと51.2%)
大当たりラウンド:15R・9C or 2R・0C 賞球数:3&4&10&14
※当たりやすさを重視

皆さま、どのエヴァをチョイスしますか?(しましたか?)

私がチョイスしたのはSFです。確変継続が高いVFとの二択でしたが、確変継続が劣るけれどもTYが高い機種を選択したことになります。

これに至る経緯は、2005年に登場した「CR初代大海」のスペック選択まで遡ります。確率1/369.5の「CR大海物語M56」と確率1/329.5の「CR大海物語M2」の選択で、M2を選択したのですが、結果は散々でした。
海物語=遊技頻度と遊技時間が長い顧客=客滞留が高く、玉単価が低ければ顧客は遊びやすく稼働は高いはずという仮説は見事に外れたことになります。

KKD(勘・経験・度胸)と簡単にはまとめられない昭和魂

数字と理論だけの頭でっかちは結果が出せない。

当時、情報処理とデータ分析を中心に戦略部に在籍していた私へ、現場から容赦のないなじりが飛んでくるなど日常茶判事でした。(気にかけていただいていたと思いましょう)

中でも印象に残っているのは、
「客がな、求めているは分かるか?安定なんかじゃない。ギャンブルじゃ」
「スタートで客をごまかすな。信用があればヨリで勝負できるんや」
「万人にいい顔をすれば、万人に見透かされる。一人の熱狂が伝播してこそ、大勢に熱狂が飛び火する。その熱狂の源にあるのはドリームだろ」

理論も形式知もナレッジも、未来予測も統計も計画もないKKDの化石のような昭和の大先輩(昭和の怪物)から放たれた至極の名言は、今でもデータ小僧だったわたしの胸に強く突き刺さっています。

昭和の怪物(強く儚い者)が、この情報処理時代に現役で活躍されているか否かは知る由もありませんが、出身企業が躊躇なく『リゼロ鬼がかり』を初期ロットでボックス導入している背景には、顧客のインサイトに迫るセンスが正しく脈々と引き継がれているのだと思います。

顧客「を」満足させるではなく、顧客「が」満足する

出率は変わらないが「ヨリが悪いがスタートが回る」vs「スタートは回らないがヨリが良い」どちらが稼働する?という議論はいまでも巷でされているのでしょうか。有効スタートとアウトの相関分析なども浸透し、ゼロアタッカー時代に愚問と思われる方もいるかもしれませんが、昔話としてお付き合いください。

スタートが回る=顧客が喰いつく=稼働が上がる。という仮説は、たいして回らない=その瞬間(高T1Y×連チャン×連チャン)を垂涎しながら待ちわびる。という現実に打ち砕かれていきます。

「客を追いかけたら客の奴隷や。客に追いかけさせなあかん」
「大量の出玉が気持ちよく増えていく快楽の前に敵うものなんてない」
「それを涎垂らしながら、待ちわびとる。」

顧客満足は「を」ではなく「が」。これは顧客ロイヤルティ協会が掲げるCSのイロハです。従業員サービスの向上など一度も考えたことのないはずの昭和の怪物(口下手)は、またしても時代を先取り的確な明言を世の中に残しました。

このヨリ戦略、生涯で2回意図的なものと体験したことがあります。
一つは九州で出会った右打ちするとヨル『CRAスーパー海物語IN沖縄2』。もう一つは東京で出会った右打ちでヨル『CRスーパー海物語IN沖縄桜バージョン桜ビッグ』。もうspy×familyのヨル・フォージャーばりに一撃必殺の特殊ミッションなのですが、その時代に優秀なゲージデザイナーがいたこと。パチンコファンのインサイトを擽り、ひそかな楽しみを提供していただいたこと。心よりを誇りに思います。

この稼働追求は「を」ではなく「が」の経験が功を奏し、『大海物語2LTK』をボックスで活かせたことは昭和の怪物には内緒にしていますが、この場でお礼を言わせていただきます。

来るぞ、令和のKKDを活かすときが

2023年エヴァの正統派次機種はスマパチとP機で同時発売。
スマパチ仕様は1/349、P機は1/319などとなった場合には1/349に軍配が上がることは目に見えています。

「パチンコはやっぱり当たらなきゃ」などは嘘です。
「パチンコは脳汁です」

そのような局面がいつ訪れるかは、わたしには分かりません。しかし、決断の時が訪れるのならば、「を」ではなく「が」。顧客「を」自社の都合で一方的に満足させた気になっているのではなく、顧客「が」熱狂するものはなにか?を令和のKKDで乗り切ってください。

令和のKKDと昭和のKKDの異なるところが2点あります。【経験】は一緒です。経験から生まれたナレッジは素晴らしいものです。
【勘】は情報分析の令和の時代は【根拠】に置き替えさせて下さい。なぜ成功するかは【勘】ではなく【根拠=エビデンス】があるからです。
そして令和のDは【度胸】でなく【ドリーム】です。令和の怪物が残した「その熱狂の源にあるのはドリームだろ」のドリームです。もちろん、度胸がないと意思決定ができませんが、意思決定の基準はそこに夢があるか?顧客のインサイトに徹底して迫れるか?が令和のマーケティングにおけるキーポイントです。

スマスロ、スマパチの時代のドリームを見つけ出す選球眼、今のうちに強化しておくことに疑いの余地はないでしょう。

その暁には名機、『エヴァンゲリオン~未来への咆哮~』が強く儚い者に変わることがあるやもしれません。
せっかく気づき上げたものをまた再構築することはた易いものではりません。
嵐の時代、突風の時代、愛する人々を守るためのチャレンジは休むことなく続くでしょう。

COCOは歌います。

そうよ飛魚のアーチをくぐって宝島が見えるころ、
何も失わずに同じでいられると思う?
人は強いものよ
そして儚いもの

その時に信じられるモノ。
私にとっては昭和の怪物の言葉です。
皆さんの信じられるモノは何ですか?

この記事を書いた人

ノンブル・マーケティング代表
  斎藤 晃一  Koichi Saito
大手ホール企業で培った分析・マーケティング力を武器に、出店や既存店強化などを支援する